研究課題
エンドセリンはET_A受容体とET_B受容体が同定されている。ETA受容体を介した疼痛発生が知られており、ET_B受容体は逆に鎮痛効果を示すとの報告がある。しかしながら、三叉神経節ニューロンには後根神経節ニューロンには発現していないET_B受容体が発現しているとの報告がある。これまでに三叉神経節ニューロンにおける細胞レベルでのエンドセリン作用を調べた報告はなく、口腔顔面領域でのエンドセリン疼痛発生機構は不明である。そこで本研究では、三叉神経節ニューロンにおけるエンドセリン受容体発現と細胞機能について明らかにし、各口腔顔面疼痛モデルにおけるエンドセリンの関与について明らかにすることであった。まずラット単離三叉神経節ニューロンにおけるエンドセリンの作用について検討した。パッチクランプ実験において三叉神経節ニューロンはエンドセリン-1投与によりカプサイシン誘発内向き電流を促進し、この促進はPKC抑制薬によって抑制された。免疫染色法によりエンドセリン-1刺激はPKC_εの膜移行を誘発し、この反応ETB受容体拮抗薬BQ-788ではなく、ETA受容体拮抗薬BQ-123により抑制された。一方、カルシウムイメージング法においてエンドセリン-1は細胞内カルシウム濃度を上昇させたが、BQ-123ではなくBQ-788により抑制された。これらの結果は、ラット三叉神経節ニューロンはET_A受容体活性化によりPKC_εの膜移行によるカプサイシン受容体TRPV1チャネルを感作させ、ET_B受容体活性化により細胞内カルシウム動員を誘導することを示唆する。ラット鼻毛部にエンドセリン-1を投与することによって、疼痛関連行動の1つである顔面グルーミング時間が延長した。ラット由来乳癌細胞を鼻毛部に接種することにより得られる顔面癌モデルにおいて、顔面グルーミング時間の延長がETA受容体拮抗薬BQ-123により抑制された。歯周病疼痛モデルと口内炎疼痛モデルの作成に成功したので、受容体拮抗薬の作用については今後検討する予定である。
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