研究課題/領域番号 |
24592816
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
望月 文子 昭和大学, 歯学部, 助教 (10453648)
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研究分担者 |
山田 篤 昭和大学, 歯学部, 講師 (50407558)
高見 正道 昭和大学, 歯学部, 講師 (80307058)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / 樹状細胞 / 分化 / 振り分け / 骨代謝 / RANKL / GM-CSF / 遺伝子 |
研究概要 |
破骨細胞と樹状細胞は共通の前駆細胞から分化するが、これらの細胞の分化振り分け機構はいまだ不明な点が多い。申請者は、『分化振り分けを制御する因子が破骨細胞性骨破壊を阻止する可能性がある』という仮説を立て、その候補因子として樹状細胞の分化を制御する因子に着目し、新たな破骨細胞分化制御因子の発見とその機能解析を目指し、それを応用した骨代謝疾患の治療方法の開発を目的とする。平成24年度は、破骨細胞の分化における樹状細胞分化に重要な因子の役割を明らかにするため、破骨細胞の分化課程における遺伝子発現変化を網羅的に解析した。まず、マクロファージを破骨細胞分化誘導因子であるRANKLで刺激し、0、24、72時間後の細胞からRNAを調整しマイクロアレイを行った。樹状細胞の分化に関わる因子に着目して解析を行った結果、転写因子Signal transducer and activator of transcription 5(Stat5)の発現が経時的に減少することがわかった。そこで、Stat5の発現を抑制するためにsiRNAでマクロファージに対してStat5遺伝子をノックダウンさせたが、破骨細胞形成が顕著に抑制されることはなかった。そこで、以前Zhao B.らによって報告された結果(Nat Med 15:1066-1071, 2009)をもとに、破骨細胞分化を負に制御している転写因子IRF8の発現を制御している因子群の挙動について、再検討を行った。その結果、転写因子ODF2(申請者が仮に命名)がIRF8の発現を制御していることが示唆され、現在、マクロファージにODF2を強制発現させる、あるいはODF2 siRNAで発現抑制させたとき、破骨細胞分化がどのように変化するか検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度は、マクロファージ、破骨細胞へ分化途中の細胞、未熟破骨細胞、成熟破骨細胞、未熟樹状細胞、成熟樹状細胞、未熟骨芽細胞、成熟骨芽細胞などの骨代謝関連細胞群に対してGeneChip解析を行い、約34,000種類の既知および未知の遺伝子の発現様式をデータベース化している。それらのデータを比較し、樹状細胞と破骨細胞の分化課程で発現様式の異なる遺伝子を候補因子とする。候補因子は、まずRT-PCRで破骨細胞分化過程でのmRNAの発現変化を確認し、次にWestern Blot法でタンパクの発現量の変化を確認する。すでに申請者は、樹状細胞分化に重要で、かつ破骨細胞の分化段階が進むに伴い発現量が減少する転写調節因子Stat5を見出している。GeneChip解析の結果とRT-PCRで発現様式が一致しない場合、real time PCRで定量的に発現量を検討する。定量的検討で変化がないようであれば、再度候補因子の選定に戻る。
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今後の研究の推進方策 |
(1)レトロウイルスベクターpMX-IRES-EGFPに候補因子のcDNAを組み込む。このベクターはEGFPが組み込まれているので、遺伝子導入効率を顕微鏡観察によって確認することができる。候補因子の発現抑制は、Dharmacon社製ON-TARGETplus siRNAを購入して行う。 (2)(1)で構築したレトロウイルスベクターをマクロファージに強制発現、もしくは発現抑制させて破骨細胞分化培養系ならびに樹状細胞分化誘導系へ添加して分化に対する影響を検討する。 (3)破骨細胞分化のマスター転写因子であるNFATc1と候補因子ととの直接的な結合を免疫沈降法、NFATc1プロモーター領域への結合をEMSA法とChromatin Immunopresipitation (ChIP)法で検討する。また、破骨細胞分化を負に制御する転写因子MafBやIRF8などの破骨細胞分化抑制因子との相互作用についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
(1)動物実験とその解析:本研究は、in vivoの実験を多く計画しており、キメラマウス作製のためのマウスや遺伝子改変マウスの購入費が必要である。また、マウスの餌や飼育・管理費、遺伝子型を確認するためのジェノタイピング試薬などの経費を必要とする。 (2)遺伝子操作:Stat5など、目的の遺伝子に対する発現ベクターや、siRNAによる遺伝子発現抑制のための経費を必要とする。 (3)組織解析・細胞解析:マウスの骨組織切片作製と骨形態計測解析の委託費用が必要となる。また、目的の細胞を分取するために、FACSAriaなどのフローサイトメトリー用試薬や細胞標識のための抗体が必要である。 (4)遺伝子・タンパク発現解析:研究期間中、細胞や組織からRNAの抽出やRT-PCR・リアルタイムPCRによる遺伝子発現変化の解析に関する遺伝子解析試薬を必要とする。 (5)細胞培養用試薬:研究期間中、in vitroでの破骨細胞分化誘導系、樹状細胞分化誘導系の細胞培養を行うため、それぞれの細胞分化誘導因子(RANKL、GM-CSF)などのサイトカイン類や細胞培養用培地、ウシ胎児血清、その他の培養に必要な試薬を必要とする。 (7)その他の器具・試薬:遺伝子操作に用いる遠沈管やマイクロチューブ、ピペットチップ、ハサミ・持針器、縫合糸などの解剖道具などの消耗品が必要となる。また、研究期間中に、EMSA法に用いる放射性同位元素、血中Ca測定濃度測定試薬、Chromatin Immunoprecipitation法に用いるエピジェネティクス用試薬、阻害剤の合成委託料などが必要となる。
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