研究課題/領域番号 |
24592816
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
望月 文子 昭和大学, 歯学部, 助教 (10453648)
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研究分担者 |
山田 篤 昭和大学, 歯学部, 講師 (50407558)
高見 正道 昭和大学, 歯学部, 教授 (80307058)
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キーワード | 破骨細胞 / 樹状細胞 / 分化 / 振り分け / 骨代謝 / RANKL / RANK / 遺伝子 |
研究概要 |
破骨細胞と樹状細胞は共通の前駆細胞から分化するが、これらの細胞の分化振り分け機構はいまだ不明な点が多い。申請者は、『分化振り分けを制御する因子が破骨細胞性骨破壊を阻止する可能性がある』という仮説を立て、その候補因子として樹状細胞の分化を制御 する因子に着目し、新たな破骨細胞分化制御因子の発見とその機能解析を目指し、それを応用した骨代謝疾患の治療方法の開発を目的とする。平成25年度は前年度に引き続き、破骨細胞の分化における樹状細胞分化に重要な因子の役割を明らかにするため、破骨細胞の分化課程における遺伝子発現変化を網羅的に解析した。樹状細胞の分化に関わる因子に着目して解析を行った結果、転写因子Signal transducer and activator of transcription 5(Stat5)の発現が経時的に減少することがわかった。しかし、2014年1月、東大のグループから破骨細胞の骨吸収機能にStat5が重要な役割を担っていると報告がなされた(Hirose J et al. J Exp Med. 211:153-163, 2014)。Stat5は、破骨細胞分化を負に制御している転写因子IRF8の発現を制御しているとの報告があるので(Esashi E et al. Immunity. 28:509-520, 2008)、現在、我々はIRF8とStat5の相互関係に焦点を当て、解析を進めている。また、Stat5以外に、IRF8の発現制御に関与している転写因子の挙動について再検討を行った。その結果、樹状細胞分化に重要な転写因子ODF2(申請者が仮に命名)がIRF8の発現を制御していることが示唆され、現在、マクロファージにODF2を強制発現させる、あるいはODF2 siRNAで発現抑制させたとき、あるいは強制発現させたとき破骨細胞分化がどのように変化するか検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に申請者は、樹状細胞分化に重要で、かつ破骨細胞の分化段階が進むに伴い発現量が減少する転写調節因子Stat5を見出した。しかし、2014年1月、東大のグループから破骨細胞の骨吸収機能にStat5が重要な役割を担っていると報告がなされた(Hirose J et al. J Exp Med. 211:153-163, 2014)。Stat5は、破骨細胞分化を負に制御している転写因子IRF8の発現を制御しているとの報告があるので(Esashi E et al. Immunity. 28:509-520, 2008)、現在、我々はIRF8とStat5の相互関係に焦点を当て、破骨細胞分化過程でこれらの因子がどのような役割を担っているか解析を進めている。 平成25年度は、マクロファージ、破骨細胞へ分化途中の細胞、未熟破骨細胞、成熟破骨細胞、未熟樹状細胞、成熟樹状細胞、未熟骨芽細胞、成熟骨芽細胞などの骨代謝関連細胞群に対して行ったGeneChip解析のデータから、樹状細胞と破骨細胞の分化課程で発現様式の異なる遺伝子を破骨細胞分化に重要な因子として候補因子ODF2を見出した。ODF2は、RT-PCRやリアルタイムPCRで破骨細胞分化過程でのmRNAの発現変化を確認済である。現在、ODF2の発現抑制あるいは強制発現を行ったとき、破骨細胞分化誘導にどのような影響が及ぼされるのか検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
(1)レトロウイルスベクターpMX-IRES-EGFPに候補因子ODF2のcDNAを組み込む。このベクターはEGFPが組み込まれているので、遺伝子導入効率を顕微鏡観察によって確認することができる。 (2)候補因子ODF2の発現抑制は、Dharmacon社製ON-TARGETplus siRNAを購入して行う。 (3)(1)(2)で構築したレトロウイルスベクターをマクロファージに強制発現、もしくは発現抑制させて破骨細胞分化培養系ならびに樹状細胞分化誘導系へ添加して分化に対する影響を検討する。 (4)破骨細胞分化のマスター転写因子であるNFATc1と候補因子ととの直接的な結合を免疫沈降法、NFATc1プロモーター領域への結合をEMSA法とChromatin Immunopresipitation (ChIP)法で検討する。また、破骨細胞分化を負に制御する転写因子MafBやIRF8などの破骨細胞分化抑制因子との相互作用についても検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初の研究計画で進めていたところで、他施設から同一の分子をターゲットとした論文が発表され、方向転換ならびに今後の研究の進め方を研究分担者と相談し検討に時間を要したため。 新規の候補因子ODF2のグローバルノックアウトマウスを早急に購入し、解析を進める予定である。
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