研究課題/領域番号 |
24592817
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮本 洋一 昭和大学, 歯学部, 准教授 (20295132)
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研究分担者 |
高見 正道 昭和大学, 歯学部, 講師 (80307058)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ジンジパイン / 破骨細胞 / 歯周病 / 骨 / タンパク質分解酵素 |
研究概要 |
我々は、Porphyromonas gingivalisが産生するリシン特異的ジンジパイン(Kgp)が破骨細胞分化抑制因子であるOPGを分解することで、LPSなどの菌体成分やTNF-α、IL-1βによる破骨細胞分化を促進することを見出し、その分子機序を解明することを目的として本研究を開始した。 本年度はまず、破骨細胞分化を正に制御するサイトカインとして、TNF-α、IL-1βおよびIL-17A、負に制御するOPGのKgpによる分解をWestern blot法で定量的に比較した。TNF-αとIL-1βはOPGに比べKgpによる分解に安定であるのに対し、IL-17AはOPGと同様にKgpによって容易に分解されることが明らかとなった。KgpがTNF-αあるいはIL-1βによる破骨細胞分化を促進し、IL-17Aによるそれを抑制することは、Kgpによる安定性で説明できると考えられた。 KgpによるOPGの主要な分解部位は、主要な分解断片の分子量とN末アミノ酸配列から、デスドメイン類似領域内であることが示唆された。分解部位のLys残基を特定するために、pCAGGSに組込んだOPG cDNAからLys-258あるいはLys-262をAlaに置換した変異OPG cDNAをinverse PCR法で作製し、CHO細胞で変異OPGを産生させた。これらの変異OPGは野生型OPGと同様、Kgpで分解されたことから、これらのLysはKgpによる分解部位ではないか、野生型OPGでは分解部位であるものの、Alaに変異しているため、付近のLysを分解する可能性が考えられた。したがって、分解部位のLysの同定には至っていない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究から、破骨細胞分化を負に制御するOPGの分解が、Kgpによる破骨細胞分化の促進に極めて重要であることが、明らかとなった。OPGの分解が歯周病性骨破壊に重要なステップであるとの当初の仮説の正しさが裏付けられる形となったと考えている。今年度得られた知見は、研究協力者の大学院生によって学会あるいは研究会で発表され、高く評価され、海外の研究会に国内の代表として派遣されるなどの経験をした。また、米国生化学会の機関誌に投稿し、現在、指示により訂正を行っている。 当初の予定では、Kgpによる分解に耐性の変異OPGの調製にある程度の目途が立っている予定であったが、今年度中に調製したLys258AlaおよびLys262Ala組換えOPGは、野生型OPGと比較し、変異OPGを含む培養上清を用いた予備的解析では、有意な分解安定性の向上は認められなかった。この部分に関しては、解析が完了しておらず、十分な達成度を得たとは言えないが、次年度以降も引き続き、Kgp耐性OPGの調製の試みを続けるためには、重要な情報となる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
Kgp耐性組換えOPGの調製を引き続き試みる。上記変異OPGを精製し、Kgpによる分解を野生型OPGのそれとの比較で詳細に解析したい。これらの変異OPGにKgp耐性が認められた場合は、同変異体のRANKL結合性および破骨細胞分化抑制活性を調べる予定である。また、変異あるいは野生型OPGの発現ベクターを導入した野生型およびOPG遺伝子欠損マウス由来の骨芽細胞を用いて、破骨細胞分化誘導に対するKgpの影響を比較検討する。Lys-258あるいはLys-262の一方では、Kgpによる分化に対して安定性が十分得られない場合は、まず、両方をAlaに置換した変異OPGを調整し、培養上清、精製タンパク質を用いてKgpに対する安定性を調べる。目的の効果が得られる場合は、同変異体について、上記の解析を進める。さらに、他の部位のLysをAlaに変異させたOPG変異体の調製を進める。 KgpによるOPGの分解の重要性をさらに検証するために、OPG遺伝子欠損マウスの骨芽細胞および骨髄細胞の共存培養系を炎症性サイトカインで刺激する破骨細胞分化誘導系におけるKgpの効果を解析する。また、OPG欠損マウスと野生型マウスの頭蓋骨膜下にKgpあるいはP. gingivalis菌体を注入し、頭蓋骨における破骨細胞形成および骨吸収を組織化学的に解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
消耗品としては次のように、各種物品および動物を購入する。本年度に引き続き、骨芽細胞および骨髄細胞を採取するマウスが必要とする。また、KgpあるいはP. gingivalis菌体を投与するためにマウスを使用する。このため、マウスの購入および飼育のための経費を必要とする。また、in vitroの細胞培養実験を行うために、培地、血清および添加物を購入する必要がある。組換えOPGの他、破骨細胞分化を正に制御するRANKL、M-CSF、TNF-α、IL-1β、IL-6、IL-17A等のサイトカイン類、破骨細胞を負に制御するインターフェロン類等のサイトカインを購入する。また、上記のタンパク質の分解を解析するために、電気泳動用試薬および器具、Western blot解析に用いる各種抗体や発光試薬を購入する。組換えOPG調製用のプラスミド、制限酵素類、大腸菌およびその培養用の培地類を購入する。また、研究成果を発表し、かつ情報を収集するために、国内の学会に参加する。そのための旅費を必要とする。
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