研究課題/領域番号 |
24592817
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研究機関 | 昭和大学 |
研究代表者 |
宮本 洋一 昭和大学, 歯学部, 准教授 (20295132)
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研究分担者 |
高見 正道 昭和大学, 歯学部, 教授 (80307058)
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キーワード | ジンジパイン / 破骨細胞 / 歯周病 / 骨 / タンパク質分解酵素 |
研究概要 |
我々は、Porphyromonas gingivalisが産生する一群のシステインプロテアーゼであるジンジパインの中でもリシン特異的ジンジパイン(Kgp)が破骨細胞分化抑制因子であるオステオプロテゲリン(OPG)を分解することで、生理的骨吸収のひとつである活性型ビタミンDやLPSなどの菌体成分、TNF-αやIL-1βなどの炎症性サイトカインによる破骨細胞分化誘導を促進することを報告してきた。昨年度までに、TNF-αおよびIL-1βもKgpの基質となるが、これらのサイトカインがOPGに比べKgp分解に対して抵抗性を示すことを見出している。さらに、KgpによるOPGの分解開始部位が、N末側のRANKL結合領域ではなく、C末側のデスドメイン類似領域にあることを明らかにしている。 本年度は、Kgpにより上記切断部位で分解されたOPGが骨芽細胞の細胞膜表面に発現するRANKLに結合する能力を失っている事を、N末蛍光標識したOPGを用いて明らかにした。さらに、KgpによるOPGの分解が、破骨細胞分化誘導培養系でも起こることを確認した。 さらに、Kgpによる破骨細胞分化促進作用の発現におけるOPG分解の重要性を確認するために、Opg遺伝子欠損マウスから採取した骨芽細胞および骨髄細胞の共存培養系を用いてKgpの効果を解析した。その結果、炎症性サイトカインによる破骨細胞分化のKgpによる促進効果が見られなくなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究から、Kgpにより分解されたOPGがRANKL結合能を消失していることを実験的に示すことができた。さらに、Opg遺伝子欠損マウスから採取した骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系では、Kgpによる破骨細胞分化促進作用が消失することを確認した。これらの成果は、KgpによるOPGの分解がRANKLとRANKの相互作用を促進することで破骨細胞分化を促進するという我々の仮説を裏付けるものである。
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今後の研究の推進方策 |
Kgpのin vitroにおける破骨細胞分化促進作用にOPGの分解が重要な役割を果たすことを明らかにしてきた。今後は、in vivo骨破壊におけるジンジパインの役割を解析するよていである。具体的には、野生型、rgpA/B遺伝子欠損およびkgp遺伝子欠損P. gingivalisをマウス頭部皮下に接種し、菌の定着、炎症細胞の浸潤、破骨細胞形成をはじめとする骨代謝を組織化学的に解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度予定していた、ジンジパイン遺伝子欠損P. gingivalis菌体をマウス頭蓋骨膜下に接種し接種し、骨代謝の変化を解析する実験は、予備的検討にとどまり、次年度に本格的に実施することとした。そのため、マウス購入・飼育に関わる費用ならびにP. gingivalis菌株の培養に要する費用を次年度使用する。 P. gingivaisの野生株および各ジンジパイン遺伝子欠損株の液体培養および平板培養を行うために、培地調製に必要な試薬を購入する。また、嫌気培養に必要な培養装置ならびに試薬を購入する。また、マウスおよび飼料および飼育ケージ等を購入する。
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