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2012 年度 実施状況報告書

摂食行動を制御する味覚回路とその情報処理機構

研究課題

研究課題/領域番号 24592818
研究種目

基盤研究(C)

研究機関日本大学

研究代表者

近藤 真啓  日本大学, 歯学部, 講師 (50312294)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワード神経回路 / 感覚
研究概要

感覚の質に特異的な神経回路の可視化およびその細胞群の摂食行動への関与について解明することを目的として本研究を開始し、当該年度は以下の結果を得た。
1. ラットの上顎臼歯間部に矯正用エラスティックを挿入して持続的な側方圧(機械)刺激を加えると、三叉神経脊髄路核尾側亜核のII/III層に存在する神経細胞の一部で、一過性のExtracellular Signal-regulated Kinase(ERK)のリン酸化およびFOS蛋白の発現が観察された。また、これらの細胞の一部はneurokinin-1(NK1)受容体を発現していたことから、標識された細胞は侵害情報の伝達に関わる細胞群であることが明らかになった。さらに、FOS蛋白の発現量はMEK阻害剤の前投与により有意に減少したことから、FOSの発現誘導はERKにより制御されていることが明らかになった。以上の結果から、ERKの活性化(リン酸化)およびFOSの発現が特定の感覚神経回路の可視化に利用できる可能性が示唆された。
2. UAS-GAL4システムを用いて、甘味または苦味受容細胞で特異的にTrpA1を異所性発現させたトランスジェニック動物を作製し、温熱刺激したのち経時的に脳を摘出してERKのリン酸化およびFosの発現を免疫組織化学的に解析した。その結果、味受容細胞の軸索が投射する食道下神経節内においてpERKの免疫活性が観察された。このpERK陽性細胞の分布が味質により異なるか否かについては今後詳しく検討していく。一方、現時点において、同一刺激条件下でFos陽性細胞は検出されていない。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究は3年計画で提案した。初年度に予定した組換体コンストラクトの作製に予想以上に時間を要しているため、解析の順序を一部変更して研究を進めた。このため、当初の計画とは順序が異なる結果となったが、計画全体からみれば、現時点において概ね良好な進行状況にあると考えている。

今後の研究の推進方策

味受容細胞に温度感受性イオンチャネル(TrpA1)を異所性発現させたトランスジェニック動物を温熱刺激することにより、特定の神経細胞群でERKの活性化が観察できたがFos蛋白の発現は観察できなかった。温熱刺激の条件が最適化できているか更なる検討の余地はあるものの、この結果はFos遺伝子の上流領域が活動依存的にはたらくドライバーとして適さないことを示唆している可能性もある。そこで今回、以下に示す2つの実験を新たに追加計画した。
1.オプトジェネティクスによる味覚神経回路の可視化
TrpA1の代わりに、チャネルロドプシン(ChR2)を発現させたトランスジェニック動物を作製し、吻部の光刺激により特定の味受容細胞の活性化を試みる。このシステムにより、中枢神経系でFos蛋白の発現が免疫組織化学的に検出できるようであれば、TrpA1を用いる計画をしていた実験をこのシステムに移行して進めていく。
2.マイクロアレイを用いた活動依存的に発現が誘導される遺伝子群の検索(Fos遺伝子の代替としての新たな候補遺伝子検索)
神経細胞特異的ドライバー(elav-Gal4)でTrpA1を異所性発現させたトランスジェニック動物に温熱刺激を与えたのち、脳を摘出してmRNAを調製する(対照群として温熱刺激なしの動物からもmRNAを単離しておく)。両群から得られたmRNAを異なる蛍光物質(Cy3, Cy5)を用いて標識し、同一マイクロアレイ上で競合的ハイブリダイゼーションをおこない、蛍光輝度を測定、比較することで神経活動依存的に発現が誘導される遺伝子群を網羅的に同定する。同定された遺伝子の上流領域のシークエンスを比較して、保存性の高い転写調節領域が見つかれば、その配列をサブクローニングして活動依存的にはたらくドライバーとして使用する。

次年度の研究費の使用計画

1.昨年度はトランスジェニック動物の作製に時間を要したため、順序を一部変更して研究を進めてきた。その結果、消耗品費の一部(88,884円)を本年度に繰り越すことになった。
2.オプトジェネティクスによる味覚神経回路の可視化:(1)ChR2トランスジェニック動物の作製および維持管理のために必要な試薬、飼料、保存容器等を購入する費用を消耗品費から支出する。(2)免疫組織化学的解析のために必要なpERKおよびFosに対する特異抗体および試薬類を購入する費用を消耗品費から支出する。
3.マイクロアレイによる活動依存的に発現する遺伝子群の検索:(1)トランスジェニック動物(elav-Gal4、uas-trpA1)の作製および維持管理のために必要な試薬、飼料、保存容器等を購入する費用を消耗品費から支出する。(2)神経活動依存的に発現が誘導される遺伝子のマイクロアレイ解析に必要なアレイ、mRNAを標識する蛍光物質、その他の試薬類を購入する費用を消耗品費から支出する。
4.上記の研究成果を学会で発表するための交通費および宿泊費を旅費から、トランスジェニック動物の維持管理補助を依頼するための費用を人件費からそれぞれ支出する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] ERK is involved in tooth-pressure-induced Fos expression in Vc neurons2012

    • 著者名/発表者名
      Hasegawa M, Kondo M* et al.
    • 雑誌名

      J Dent Res

      巻: 91(12) ページ: 1141-1146

    • DOI

      doi: 10.1177/0022034512462397

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Involvement of AMPA receptor GluR2 and GluR3 trafficking in trigeminal spinal subnuclues caudalis and C1/C2 neurons in acute facial inflammatory pain2012

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto M, Tsuboi Y et al.
    • 雑誌名

      PLoS One

      巻: 7(8) ページ: e44055

    • DOI

      doi: 10.1371/journal.pone.0044055.

    • 査読あり
  • [学会発表] Extracellular signal-regulated kinase phosphorylation in trigeminal spinal nucleus and upper cervical spinal cord neurons induced by experimental tooth movement

    • 著者名/発表者名
      Shibuta K
    • 学会等名
      第90回日本生理学会大会
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京)
  • [学会発表] Overexpression of Dscam leads to axonal targeting defects in the Drosophila sensory neurons

    • 著者名/発表者名
      Kondo M
    • 学会等名
      第35回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      マリンメッセ福岡(福岡)
  • [学会発表] Neuronal Ig receptors control neural wiring specificity and feeding behavior in Drosophila

    • 著者名/発表者名
      Kondo M
    • 学会等名
      10th International Symposium on Molecular and Neural Mechanisms of Taste and Olfactory Perception (YR Umami Forum 2012)
    • 発表場所
      九州大学馬出キャンパスコラボレーションセンター(福岡)

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公開日: 2014-07-24  

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