研究課題/領域番号 |
24592819
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
武田 守 日本歯科大学, 生命歯学部, 准教授 (20227036)
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キーワード | 痛覚 / 三叉神経節 / 神経栄養因子 / パッチクランプ / 蛍光標識法 / パラクリン |
研究概要 |
前年度、免疫組織学的解析により得られた結果をもとに、逆向性標識された小型三叉神経節ニューロンの興奮性がBDNF投与により、どのように変調するかについて穿孔ホールセルパッチクランプ法(in-vitro)を用いて電気生理学的に炎症動物と比較解析した。対照群ラットにおけるFG/MBで標識された小型三叉神経節ニューロンはBDNF投与により, 大多数のニューロンはスパイク発火を伴う、脱分極性応答を示した。一方、炎症群ラットでは、42%のニューロンにおいて自発放電が観察され、BDNF投与により、スパイク発火を伴う、脱分極性応答を示した。脱分極性応答を誘発するBDNFの濃度は正常群に比較して炎症群では有意に低い値を示した(52.3±14.0ng/ml vs 12.9±6.3ng/ml)。炎症群の脱分極パルスに誘導されるスパイク発火閾値および静止膜電位の値は正常に比較して有意に低い値を示した。スパイクの持続時間も炎症群において延長していた。これらの変化は受容体遮断薬(K252a)の同時投与により消失した。一方、電圧固定下において、電位依存性K電流(IA、IK)に対するBDNFの効果を対照群と炎症群で比較した。正常群および炎症群ラットの小型三叉神経節ニューロンのIA及びIK電流は正常群でBDNF投与により抑制され、その抑制率は炎症群で有意に高い値を示した。BDNFによる電位依存性K電流の抑制効果はK252aの同時投与により消失した。これらの結果は深部組織の炎症時に生じる痛覚過敏発現には、炎症に起因した三叉神経節内、小型三叉神経節ニューロンのBDNF産生増加、受容体のup-regulationにより、電位依存性K電流の抑制を介した小型三叉神経節ニューロンの興奮性が変調する可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度は、前年度、免疫組織学的解析により得られた結果をもとに、逆向性標識された小型三叉神経節ニューロンの興奮性がBDNF投与により、どのように変調するかについて穿孔ホールセルパッチクランプ法(in-vitro)を用いて電気生理学的に炎症動物と比較解析した。その結果,正常群に比較して、炎症群ではBDNFに対する興奮性が有意に増大している傾向が見られ、これらの変化は電位依存性Kチャネルの変化に起因することが判明し2編の論文として公表できた。したがって、当初予定した研究成果がほぼ得られたものと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
前年度の研究成果をもとに、今年度はin vivoにおいて侵害刺激に応じる三叉神経節ニューロンの興奮性が局所的にパラクリン分泌された BDNFによりどのように変調するかをマルチバレル電極による微少電気泳動法を用いて確認し、炎症動物と比較解析することにより、in vitroの実験系で得られた知見をin vivoで検証する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は研究が順調に進み、当初予定していた実験回数より少ない回数で研究を終えたため、使用機材、薬品、動物などの購入費が次年度に繰り越せた。 繰越額は平成26年度の実験計画である in vivoにおける電気生理学的実験機材や薬品、動物購入費に有効に利用する予定である。
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