研究課題/領域番号 |
24592820
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本歯科大学 |
研究代表者 |
今井 あかね 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (60180080)
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研究分担者 |
梨田 智子 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 准教授 (10133464)
吉江 紀夫 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 教授 (30095278)
辻村 麻衣子(羽下麻衣子) 日本歯科大学, 新潟生命歯学部, 講師 (60535219)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 耳下腺 / 腺房細胞 / エクソサイトーシス / Rabタンパク質 / GEF / GAP / SNARE / exocyst |
研究概要 |
超高齢社会を迎え、唾液分泌量の低下による口腔乾燥症を訴える患者が増加している。咀嚼、嚥下、会話、齲蝕予防、感染予防など、QOL(クオリティー・オブ・ライフ)を考えるでは唾液タンパク質分泌は重要な要素である。本研究では、腺房細胞(外分泌細胞)における分泌顆粒の形成から放出後まで、細胞内膜輸送の必須因子である低分子量GTPase(Rab)を中心としたネットワークおよび開口分泌時の分子の動態を解明することを目的とした。 平成24年度は腺房細胞中のRab27の完全なGDP/GTPサイクルを明らかにした。すなわち、Rab27のGTP/GDP交換因子(Rab27-GEF)について調べた。Rab27-GEF活性を持つことがメラノサイトで知られているMADD/DENN/Rab3GEPのタンパク質発現と局在とをWestern Blot法により調べ、耳下腺腺房細胞の可溶性画分に認めた。次に抗MADDウサギ抗体を調製して、ストレプトリジンO(SLO)処理した腺房細胞に導入し、IPR刺激すると抗体濃度依存的にアミラーゼ分泌が阻害された。また、選択的にGTP型Rab27に結合するGST-SHDを用いたGTP-Rab27 pull-down assayでは、抗MADD抗体によりIPR刺激時のGDP/GTP交換反応が抑制されGTP型Rab27の量が有意に減少する結果を得た。さらに、GST融合MADDリコンビナントタンパク質(dominant negative type)を作成し、SLO処理細胞に導入した場合も、同様に濃度依存的にアミラーゼ分泌が阻害された。以上の結果から, Rab3GEPとして知られるMADDは耳下腺腺房細胞においてRab27-GEFとして働き、IPR刺激によるアミラーゼ分泌にRab27のGDP/GTP交換反応を通して関与していることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
耳下腺腺房細胞のエクソサイトーシスにRab27が重要な役割を果たしている。しかし耳下腺腺房細胞内での挙動は明らかにされておらず、どのようなエフェクターが関与してRab27を制御しているのかも不明であった。現在までに耳下腺Rab27のGAP(GTPase活性化因子)はEPI64であること、GEF(GDP/GTP交換因子)はDENNDファミリーのMADDであることを突き止めた。本研究により、これまで明らかにしてきたRab27のエフェクターであるSlac2-c, Slp4, Noc2およびGDIと共にRab27の耳下腺腺房細胞でのおおよそ一連の挙動を推測できる段階にまで達することができた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)IPR刺激による耳下腺腺房細胞中の各種Rabとエフェクター類のmRNA発現変化の網羅的解析および各発現量の定量化―――マイクロアレイによる解析。発現量に変化のあるRabおよびエフェクターを選別し、リアルタイムPCR により定量化。 (2)経時的な各種Rabとエフェクターの細胞内局在変化の解析―――免疫組織化学的手法を用いてβ刺激前後のRabとRab/エフェクター複合体の挙動を観察する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の研究計画を継続して行い、更に(3),(4)および(5)の実験を開始する。 (3)経時的なRabのGTP型、GDP型の割合変化の検索―――GTPまたはGDP結合Rabを特異的に結合できる解析ツールを用いpull down assayによりGTP型とGDP型Rabの割合を算出する。(4)唾液腺腺房細胞内に発現しているRab27以外のRabをサイクルさせるための因子、GDP/GTP交換反応促進因子(GEF)、GTPase活性化タンパク質(GAP)、GDP/GTP交換反応抑制タンパク質(GDI)、GDP解離促進因子(GDF)の同定―――RT-PCR, ウエスタンブロッティング,免疫組織化学を駆使して、腺房細胞内発現と局在、刺激後の挙動を明らかにする。(5)分泌顆粒消失後から再生までのRabとエフェクターの挙動追跡―――β刺激により分泌顆粒を全て放出させ、そこから顆粒再生までをウエスタンブロッティング,免疫組織化学を駆使してRabとエフェクター挙動を経時的に観察する。
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