研究課題/領域番号 |
24592823
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
鍛治屋 浩 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (80177378)
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研究分担者 |
岡本 富士雄 福岡歯科大学, 歯学部, 講師 (60153938)
岡部 幸司 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (80224046)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 破骨細胞 / Cl輸送体 / ファルネシル2リン酸合成酵素 / ビスフォスフォネート / 骨吸収 |
研究概要 |
【目的】ファルネシル2リン酸合成酵素(FDPS)は低分子GTP結合タンパク質のプレニル化を行う酵素であり、この作用によるプレニル化タンパク質は細胞膜へ局在し細胞増殖、分化、移動など機能を担うことが知られている。一方、窒素含有ビスホスフォネート(NBPs)はFDPS活性を阻害し破骨細胞の吸収時骨格の阻害により最終的に骨吸収を抑制することが知られている。しかしながら、FDPSが酸分泌輸送体自身を調節しているか明らかでない。私はイーストツーハイブリッド法によりFDPSがClC7型Cl輸送体(Clcn7)の細胞質ドメインに結合能を持つことを明らかにした。そこで、破骨細胞特異的なFDPSトランスジェニック(FDPS tg)マウスを作成し、破骨細胞のFDPSの発現、局在及びCl分泌能の調節への関与を検討をした。 【方法】目的分子の発現をqPCR法、Western blot法、免疫沈降法及び免疫染色法により検討した。Cl分泌能はパッチクランプ法と蛍光測光法を用いた。野生型(WT)とFDPS tgマウスの脛骨を用い、μCT法と骨形態解析法を行った。 【結果と考察】WTマウス由来の骨髄マクロファージとRAW264.7細胞の破骨前駆細胞においてFDPSの発現が認められ、RANKLを用いた分化刺激によりわずかに増加した。FDPSとClcn7の破骨細胞における局在はほぼ一致し、さらに破骨細胞やFPDSとClcn7を過剰発現したHEK細胞において、免疫沈降法により両分子が会合することが解った。FDPS阻害剤ゾレンドロン酸はClcn7由来するCl分泌を濃度依存性に抑制し、同時に細胞内Clの上昇を伴った。脛骨の骨密度はWT比較しFDPS tgマウスで優位に減少していた。以上の結果より、FDPSはin vitroとin vivo共にCl分泌輸送体を調節し骨吸収活性化方向に調節していることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度、作成・交配した破骨細胞特異的なトランスジェニックマウスを用いマイクロCT装置を利用した骨量解析方法が習得でき、我々自身で行えるようになった。又、それ以外の染色法による骨形態解析の一部に関して業者委託してこれらの解析作業が効率よく行た結果順調な進捗であった。さらに予想した結果に近いものが得られたので順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、このトラスジェニックマウスから破骨細胞を誘導し、in vitroにおける破骨細胞分化・形成における分子の発現と活性化の変化や吸収能に関連する輸送体の活性化の変化などについて野生型マウス由来のものと比較しながら検討する。具体的にはFDPS tgマウス由来の破骨細胞のCl分泌能と骨吸収活性の検討とFDPSのサイレンシングによる下流シグナルの変化の検討すすることを計画している。
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次年度の研究費の使用計画 |
FDPS tgマウス由来の破骨細胞のCl分泌能と骨吸収活性の検討とFDPSのサイレンシングによる下流シグナルの変化の検討 In vitroでFDPS tgマウス由来の破骨細胞のCl分泌能について、パッチクランプ法と蛍光測光法により検討する。さらに、プロトン分泌能について蛍光測光法を、また最終的な骨吸収能については、吸収窩解析法により検討する。同時に、このWTマウス由来の破骨細胞のFDPS阻害剤ゾレドロン酸によるCl分泌能抑制におけるゲラニルゲラニル酸やファルネシル酸などメバロン酸代謝系の下流分子による回復効果について検討する。逆に、shRNAベクターを構築し、破骨前駆細胞(RAW264.7細胞や骨髄マクロファージ)に導入してFDPSのサイレンシングした場合のClとH分泌能及び骨吸収能の変化について検討する。もし、有意な変化が認められない場合、Clcn7やV-ATPase以外の酸分泌可能な輸送体(Na+/H+交換輸送体やK+/Cl- 共輸送体)による酸分泌活性能を検討する。 さらに、下流シグナルの変化の検討のために、FDPSにより合成されるゲラニルゲラニル2リン酸やファルネシル2リン酸によりプレニル化される低分子Gタンパク質(Rho、Rac、Rasなど)の活性化やその代償性経路(ROCKキナーゼなど)の活性化の有無についても検討する。この場合も、標的下流分子をサイレンシングしてメカニズムを検討する。
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