研究課題/領域番号 |
24592824
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
石川 誠 北海道大学, 大学病院, 准教授 (10202970)
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研究分担者 |
北村 哲也 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00451451)
進藤 正信 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20162802)
東野 史裕 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (50301891)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 口腔がん / pp32r1 / pp32 / ARE-mRNA / HuR / 核外輸送 / 安定化 |
研究概要 |
申請者らは最近、ARE-mRNAの安定化が細胞をがん化することを証明し、口腔がんなど多くのがんでもHuRが核外輸送され、ARE-mRNAも核外輸送・安定化されていることを見出した。さらに口腔がん細胞のHuRをノックダウンすると足場非依存性増殖能や浸潤活性も低下することを見出し、これらの成果に基づき申請者らは、ARE-mRNAの核外輸送システムの破綻による、新たな発がん機構を提唱している。本研究では、ARE-mRNAに結合するRNA結合タンパクHuRが分解制御されることによりどのように細胞のがん化に寄与しているかを解析し、それらを制御することにより新しいがんの治療法を開発することを目的とする。本年度は口腔がん細胞のpp32ファミリーおよびHuRの発現を検討し、さらにpp32r1の口腔がんにおける役割を解析した。 1.口腔がん細胞のpp32ファミリーおよびHuRの発現 口腔がんを含むがん細胞、HEK293、SAS、HeLa、HT1080、HSC-3などで発現しているpp32r1、pp32、HuRをウエスタン法で検出し、正常細胞(MRC5、HGF、BJ)で発現しているそれらのタンパクと比較した。その結果pp32r1の発現ががん細胞で顕著に高く、他のタンパクはそれほど大きな差はなかった。さらに、それらタンパクの局在を免疫染色法で確認したところ、pp32r1はがん細胞の細胞質に多く存在し、その他のタンパクは主に核に局在することがわかった。 2.pp32r1の口腔がんにおける役割 pp32r1ががん細胞の形質に影響するか検討するため、SAS細胞にpp32r1を発現させ、軟寒天コロニー中でがん細胞の培養を行った。その結果pp32r1を発現している細胞は軟寒天中でもよく生育し、pp32r1はがん細胞の持つ足場非依存性増殖能を増強することが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
口腔がん細胞におけるARE-mRNAの核外輸送・安定化を解明する目的のため、初年度はARE-mRNAに直接結合してその輸送に関わるHuRタンパクと結合するpp32とそのファミリーpp32r1について口腔がん細胞を用いて解析した。pp32r1は細胞がん化に関わると考えてられており、今回の研究で主にがん細胞でpp32r1の発現が高かったことはいい発見だと判断できる。またpp32r1を発現させた細胞の足場非依存性増殖能が上昇したことは、pp32r1の発がん活性を別の角度から証明したことになるため貢献度が大きいと考える。
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今後の研究の推進方策 |
細胞に致死性ストレスが加わると、pp32とHuRの複合体は核外に輸送され、細胞質でcaspaseによりHuRが分解される。今後はこのHuR分解に対してpp32r1がどういう働きをするのか検討し、がん細胞での両タンパクの関連を解析したい。HSC-3などの口腔がん細胞、HGFなどの正常細胞にpp32r1発現ベクターを導入し、pp32r1が強制発現された細胞を形成し、スタウロスポリンなどの刺激によりHuRとともにpp32r1が細胞質に輸送されるか蛍光免疫染色法で確認し、HuRが分解されるかをウエスタン法で検討する。HuRはCaspaseの働きにより分解されるので、pp32およびpp32r1の持つCaspase活性を解析する。具体的には、pp32r1発現細胞やin vitroで作成したpp32r1などを用いて、Caspase assay法により検討する。ここまでの結果でHuR分解に対するpp32r1の役割が明らかになれば、次は口腔がん細胞でpp32r1がHuRの分解に対して同様の効果を持つか検討し、がん細胞の細胞質でHuR発現が高い原因を明らかにする。
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次年度の研究費の使用計画 |
データ処理・保存の媒体、研究用試薬、細胞培養器具等の消耗品購入に使用する。
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