研究課題/領域番号 |
24592825
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研究機関 | 北見工業大学 |
研究代表者 |
早川 吉彦 北見工業大学, 工学部, 准教授 (70164928)
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キーワード | X線CT画像 / 金属アーチファクト / 逐次近似法 / 統計的画像再構成法 / 歯顎顔面画像診断 |
研究概要 |
統計的画像再構成法を利用してX線CT画像上のメタル・アーチファクトを軽減する方法について研究を行った.まず逐次近似法ML-EM法を使ったが,画質に影響せずに演算を高速化するOS-EM法をその後は採用した,歯顎顔面部では薄いスライスで撮影され,隣り合うスライスにはよく似た解剖学的構造が描出されている.アーチファクトのない画像の隣には弱く出るスライスがあり徐々に強くなる.そこで,アーチファクトのない画像のプロジェクションデータをもとに次々と隣接する画像を処理する.また,上顎はhead to footで下顎はその逆で処理した.このような方法で解剖学的構造描出の再現性はよくなった. 平成24年度には,OS-EM法だけでなく処理を高速化する工夫を行った.顎骨内でアーチファクトの発生部位に小さなROIを設定することとGPGPUマシンとCUDAプログラミングで処理することである.また,歯科矯正用ワイヤやブラケットによる不規則なアーチファクトが存在する画像の処理も行った.MDCT画像で非常に小さなROIを設定した場合,歯科矯正装置よるアーチファクトが存在した場合,0.2mm厚のCBCT画像の場合,それぞれで良好な結果を得た.また,OS-EM法の採用,小さなROIの設定,及びGPGPUとCUDAで計算時間の大きな削減ができた.平成25年度は,この結果を“Dentomaxillofacial Radiology(国際歯顎顔面放射線医学雑誌)”に投稿し,平成26年4月に受理(accepted for publication)された. また,平成25年度は歯科用コーンビームCT画像に同様な処理を行った.画質改善の3Dフィルターや領域拡張法をも用いて,アーチファクトの軽減と画質の改善を図り,平成25年12月,第99回北米放射線医学会年次大会(RSNA2013)等で発表した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1年目の平成24年度にGPGPUマシンとCUDAプログラミングによって演算を高速化することに研究費の大きな部分を費やした.それによってかなりの演算の高速化を実現し,その成果は“Dentomaxillofacial Radiology(国際歯顎顔面放射線医学雑誌)”に投稿し,平成26年4月に受理(accepted for publication)された. これ以外のアルゴリズムも改良については,OS-EM法の応用,successive processingとreverse processingの採用,小さなROIの設定などに取り組んだ。平成24(2012)年度内にその成果をまとめ,米国歯顎顔面放射線医学会雑誌“Oral Surgery Oral Medicine Oral Pathology Oral Radiology”に投稿し,平成25(2013)年2月号に掲載された. 以上の研究は,研究協力者(海外共同研究者)のCornelia Kober(Professor, Professor, Faculty of Life Sciences, Hamburg University of Applied Sciences, Hamburg, Germany)と共同で行っている.
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今後の研究の推進方策 |
2年目の平成25年度から,歯科用コーンビームCT画像でMDCT画像と同様な処理をすることに取り組んだ.今後は,3次元フィルター処理や領域拡張法による処理と組み合わせて,コーンビームCT画像の画質改善を図る.MDCT画像に対する処理で演算の高速化に役立った処理,すなわち,OS-EM法の応用,小さなROIの設定,GPGPUマシンに対するCUDAプログラミングを最適化などをコーンビームCT画像の処理にも応用する.コーンビームCT画像はスライス数が多いので必要な工夫と考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
なお,次年度使用額が20万円発生した。1年前には次年度使用額が10万円発生していた.平成25年1月に「GPGPUマシン」の見積をとったところ予想より安かったためである。平成24年11月末に行われた国際学会(RSNA)で東京慈恵会医科大学の中田典生先生と議論して考えた仕様で予想した。それをそのまま発注したので次年度使用額が生じた。これを含めて1年目の平成24年度にGPGPUマシンを2台入手しているので,2年目には新たに購入する必要はなかった.したがって,2年目には高額なGPGPUマシンは購入しなかったため次年度使用額が発生した. 3年目にはGPGPUマシンのコストパフォーマンスがよくなっているので画像処理と演算速度の最適化のために新規購入を予定している.次年度使用額を今年度請求額に合算して使用する。 2014(平成26年)年6月のCARS2014(Computer Assisted Radiology & Surgery)国際会議(福岡開催)等で学術発表を予定している.コーンビームCT画像に対する処理結果はまだ学術論文として発表していないので,価値のある結果を出して公表したいと思っている.
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