統計的画像再構成法を利用してX線CT画像上のメタル・アーチファクトを軽減する方法について研究を行った.まず逐次近似法ML-EM法を使ったが,画質に影響せずに演算を高速化するOS-EM法をその後は採用した,歯顎顔面部では薄いスライスで撮影され,隣り合うスライスにはよく似た解剖学的構造が描出されている.アーチファクトのない画像の隣には弱く出るスライスがあり徐々に強くなる.そこで,アーチファクトのない画像のプロジェクションデータをもとに次々と隣接する画像を処理した.このような方法で解剖学的構造描出の再現性はよくなった. 平成24~25年度には,OS-EM法だけでなく処理を高速化する工夫を行った.顎骨内でアーチファクトの発生部位に小さなROIを設定することとGPGPUマシンとCUDAプログラミングで処理することである.また,歯科矯正用ワイヤやブラケットによる不規則なアーチファクトが存在する画像の処理も行った.MDCT画像で非常に小さなROIを設定した場合,歯科矯正装置よるアーチファクトが存在した場合,0.2mm厚のCBCT画像の場合,それぞれで良好な結果を得た.また,OS-EM法の採用,小さなROIの設定,及びGPGPUとCUDAで計算時間の大きな削減ができた.この結果を国際雑誌に投稿し,平成27年4月に受理され,7月号に掲載された. また,平成26年度は歯科用コーンビームCT画像に同様な処理を行った.画質改善の3Dフィルターや領域拡張法をも用いて,アーチファクトの軽減と画質の改善を図り,国内外で学術発表を行った.平成26年9月,この研究を含めて大学院生のDong Jian君に博士(工学)の学位が授与された.
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