自然免疫と獲得免疫を担う樹状細胞はT細胞の記憶を形成する重要な役割を担っている。記憶T細胞の形成にはエフェクターT細胞の最終分化をとめる何らかの抑制性シグナルが必要と考えられるが、その詳細については知られていない。BATFはAP-1/ATFファミリーに属する転写因子で、活性化T細胞に発現して、c-Junとヘテロダイマーを形成しAP-1の転写活性を負に制御する。本研究では、活性化したT細胞と樹状細胞の双方に発現する抑制性転写因子BATFに注目しその発現を可視化するため、BATFのプロモーターの領域にLuc遺伝子、GFP遺伝子、dsRED遺伝子を結合した3種類のレポーターミニ遺伝子を構築した。まず樹状細胞におけるBATFの発現をreal-time PCRにより解析した。マウス骨髄由来の樹状細胞や脾臓から単離した樹状細胞をTLRリガンドで刺激するとBATFの発現が誘導されたが、樹状細胞株では恒常的な発現がみられTLR刺激による発現上昇は認められなかった。次に樹状細胞株にレポーターミニ遺伝子を導入してTLRリガンドで刺激を行ったところ、レポーター活性の上昇はみられなかった。さらにBATFの発現がTLRシグナル下流のMyD88を介しているかどうかを調べるために、MyD88欠損マウスから樹状細胞を単離してTLRリガンドにより刺激するとBATFが誘導されることがわかった。以上の結果から、primaryの樹状細胞と細胞株ではBATFの発現パターンが異なり、primary細胞におけるTLRリガンドによるBATFの発現誘導はTLR下流のMyD88を介さない可能性が示唆された(論文投稿準備中)。
|