研究課題/領域番号 |
24592829
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
丸山 智 新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (30397161)
|
研究分担者 |
阿部 達也 新潟大学, 医歯学総合病院, レジデント (70634856)
山崎 学 新潟大学, 医歯学系, 助教 (10547516)
程 クン 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (40207460)
朔 敬 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40145264)
|
キーワード | 唾液腺多形性腺腫 / 低酸素 / HIF-1α / 細胞外基質 / SM-AP |
研究概要 |
1) SM-AP細胞系の細胞外基質(ECM)遺伝子・蛋白質発現解析: ヌードマウス移植腫瘍実験に先立ち、SM-AP1とSM-AP4におけるECM発現について試験管内で比較した。両細胞を通常の培養条件(10% FCS/5% CO2)と低酸素条件(1%O2/5%CO2/94%N2)とで48時間培養後に、RNAを抽出・精製し、cDNAを調整して定量的RT-PCR法にて比較した。その結果、両細胞間で、前年のfibronectinおよびtenascinのに加えて、perlecanおよびcollagen type IVの高発現も確認された。また同様に4%パラフォルムアルデヒドで固定後、各抗体をもちいて、その発現動態を蛍光抗体法にて検討したところ、両細胞間で、perlecanおよびcollagen type IVが高発現していることが確認された。以上のことから確認しえたECM分子はいずれも中長期低酸素培養条件下でその合成が促進されることが示された。 2) SM-AP細胞系の細胞外基質(ECM)遺伝子発現抑制による細胞機能解析: 1)での低酸素下でのECM合成促進の結果をうけて、これらECMが細胞機能にどのように関わっているのかを検討するために、SM-AP細胞系にsiRNAを用いたECM発現抑制した系を作成し、増殖および遊走能の比較検討をおこなった。まず始めにperlecanについて検討した結果、siRNAでperlecanの発現抑制をおこなうことで、SM-AP1とSM-AP4ともに細胞増殖は抑制され、遊走能は亢進する結果が得られた。またsiRNAでperlecanの発現抑制してもHIF-1aの遺伝子発現レベルには変化がないことも確認され、perlecan遺伝子発現はHIF-1aの下流に位置していることも示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに多形性腺腫由来SM-AP細胞を用いた試験管内における細胞レベルでの検討で、中長期低酸素培養下で低酸素応答を司る転写因子であるHIF-1αの遺伝子および蛋白質ともに高発現をしめす培養条件を確定できた。このことは「乏血管性の間質を特徴とする唾液腺多形性腺腫には低酸素状態があり、その中で腫瘍細胞増殖が維持されている」という仮説が証明されたことであり、さらには癌の微小環境である低酸素環境を多形性腺腫由来SM-AP細胞をもちいて試験管内で再現することができたことを意味する。さらにこの低酸素環境下において、ECM分子であるfibronectinおよびtenascinに加え、perlecanおよびcollagen type IVの遺伝子発現が高いことが定量的RT-PCR法にて確認できた。よって、すくなくとも低酸素環境の構築にかかわる責任あるECMの候補として、これらの蛋白質が同定できたことを意味する。さらにこれらの分子のうちsiRNA法をもちいたperlecan発現抑制による細胞機能を検討したところ、細胞増殖は抑制された、遊走能は亢進したことから、機能的には低酸素下でECM合成は細胞の増殖を維持し、促進するための組織構築背景となっている可能性が示唆された。現在fibronectinについて同様に検討中である。
|
今後の研究の推進方策 |
前述のとおり、癌の微小環境としての多形性腺腫由来SM-AP細胞をもちいた低酸素状態の実験モデルを確立し、この実験系を用いて、低酸素環境の構築にかかわる少なくとも4種のECMの候補を検索できた。さらに検索しえた分子について、同細部系ヌードマウス移植腫瘤やヒト多形性腺腫を含むヒト腫瘍・癌組織材料をもちいた免疫組織化学的解析により、もっとも低酸素環境の構築にかかわるECMを絞り込んで行くとともに。さらに試験管内で、perlecan同様に、他の同定しえたECMの発現またはECM発現誘導遺伝子をノックダウンすることで、細胞の増殖や遊走といった機能面の解析へ実験を展開したい。またこれまでの実験結果をもとにその評価と総括をおこない、さらなる展開を期したい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
現在までの進達度でも記載したように、SM-AP細胞系のECM遺伝子発現抑制による細胞機能解析での検討で、ECMであるperlecanに引きつづき、fibronectinの検討が年度をまたいでだため。 上述のとおり、SM-AP細胞系のECM遺伝子発現抑制による細胞機能解析の際の、実験器具にもディスポーザブルのガラス・プラスチック器具の購入にあてる。
|