研究課題/領域番号 |
24592833
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
弘田 克彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 准教授 (60199130)
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研究分担者 |
村上 圭史 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (10335804)
岡村 裕彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (20380024)
三宅 洋一郎 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (80136093)
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キーワード | 自己免疫疾患 / 糖尿病 / ミトコンドリア / 自己抗体 / 膵β細胞 / CXCL10 / ケモカイン / PBC |
研究概要 |
自己免疫疾患発症の機序、すなわち免疫寛容破綻機構に、ケモカイン動態が関与することが報告され始めた。基盤研究C (平成21,22,23年度)の研究結果から、我々は大腸菌に発現させた口腔レンサ球菌のrSi-HLPで培養ヒト単球マクロファージ細胞を刺激することで、一部のケモカインが上昇することを示すことができた。しかし未だケモカイン動態に関する詳細な情報は得られていなかった。本基盤研究Cでは、数種の培養ヒト細胞をrSi-HLPで刺激した際に得られるケモカイン動態を可能な限り網羅的に解析し、rSi-HLPがPBCおよび関連する自己免疫疾患の免疫寛容破綻機構と関係する因子となりうることを期間内に証明することを目的とした。その結果、rSi-HLP刺激がTHP-1細胞のインターフェロン誘導タンパク質-10(IP-10、CXCL10)のmRNA発現およびタンパク質産生量を共に異常なほど上昇することを確認した。IP-10は、形質細胞様樹状細胞(Plasmactoid dendritic cell;pDC))の遊走因子であり、最新の知見では、pDC,単球/マクロファージ,リンパ球の集積異常が自己免疫反応の始まりと考えはじめられている。 現在までの我々の多くの免疫組織化学染色結果とあわせて考察すると、IP-10の動態変化が、原発性胆汁性肝硬変(PBC)および関連自己免疫疾患の免疫寛容破綻機構に関与すると推測される。 我々は、本実験動物中の一部に自己免疫性膵炎も生じることをあわせて見出しており、現在この発症機序に関しても本ケモカイン動態が関与すると考えている。また,S. intermedius重症感染症患者には糖尿病患者が多いことも知られている。そのため本研究は糖尿病と関連するメカニズム解明の一助にもなる可能性が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
達成度の理由は、以下の結果や考えが得られたことによる。 HLP抗体を用いて、Streptococciの他にもS. aureusやE. coli等で菌体表面と菌体内を含めたTotalのHLP量を定量した。この結果より、同じStreptococcusでもmutansのように菌体表層に発現していない株(菌体内に発現)もあり、菌株によりHLPの分泌量は異なることが明らかとなった。HLPはheparin結合能を有するので、菌体のheparinへの付着は、菌体表層に発現したHLP量に依存すると思われる。さらにHLPのreceptorとしてのheparinの構造をさらに詳細に決定するために、糖鎖Arrayを用いた解析を行った。Heparin, 2-O-Desulphated Heparin, 6-O-Desulphated Heparinには強く結合し、N-Desulphated HeparinとN-Desulphated ReN-Acetylated Heparinには少し弱いが結合することが明らかになった。Microarray解析により、rSi-HLPは、THP-1細胞に対して、chemokineやcytokineを強く誘導発現させる。 Multi-plex assayにて、蛋白産生レベルでも、rSi-HLPは、THP-1細胞に対して、chemokineやcytokineを強く誘導産生させる事が確認された。さらにmacrophage様に分化させたTHP-1細胞では、rSi-HLPのchemokineやcytokine誘導産生能はより強力であった。rSi-HLPは、chemokineやcytokine のみならずTHP-1細胞に対して接着分子であるCD54 (ICAM-1; Rhinovirus receptor)の発現も顕著に誘導した。CD54 (ICAM-1)の発現は、JNK inhibitorであるSP600125で特異的に抑制された(ERK1/2のinhibitorであるPD98059では抑制されなかった)
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今後の研究の推進方策 |
我々は、以前に実施した実験動物中の一部に自己免疫性膵炎が生じることを既に見出しており、現在この発症機序に関してもケモカイン動態が関与すると考えている。そのためrSi-HLPが細胞へ結合し細胞内へ取り込まれる分子イメージを、蛍光色素でラベルしたrSi-HLPを用い、共焦点レーザー蛍光顕微鏡で観察し解析する。次に、細胞内へ取り込まれたSi-HLPが、マウス培養膵β細胞MIN6の小胞体異常を惹起するかどうかを併せて検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
各種条件のrSi-HLP刺激による培養ヒト単球/マクロファージや胆管上皮細胞での遺伝子発現変化や、予備実験で検出されているCXCL10, CXCL8, CCL2, CCL3, CCL4等のケモカイン産生変化をmicroarrayとmulti-plex測定法を用いて網羅的に解析するとともに、各種阻害剤を使用することで、誘導メカニズムの解明をはかりたい。これらは同時期に全て同じ条件ですることが求められる。しかし残った372,640円では、上記の実験を全て同時期に実施するにはわずかに研究費の不足が生じると予想された。そのため372,640円を残し、次年度の使用額と合わせて、今後の推進法策に記した内容とともに全てを完了させることが、より信頼性の高い結果が得られると考え、次年度使用額を発生させた。 各種条件のrSi-HLP刺激により培養ヒト単球/マクロファージTHP1細胞、胆管上皮HUCCT1細胞、膵βMIN6細胞での遺伝子発現変化や、CXCL10, CXCL8, CCL2, CCL3, CCL4等のケモカイン産生変化をmicroarrayとmulti-plex測定法を用いて網羅的に解析するとともに、各種阻害剤を使用することで、誘導メカニズムの解明をはかる。使用する細胞は全て保有しており、解析器機も現在は全て総合研究所に備わっている。
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