研究課題/領域番号 |
24592834
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
筑井 徹 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (10295090)
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研究分担者 |
徳森 謙二 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准助教 (40253463)
河津 俊幸 九州大学, 大学病院, 助教 (20294960)
吉浦 敬 九州大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (40322747)
加美 由紀子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60552023)
川野 真太郎 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (00398067)
吉浦 一紀 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20210643)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | permeability / 造影剤 / perfusion / 動脈入力関数 / モデル解析 / スピンラベリング |
研究概要 |
permeabilityの研究、特に動脈入力関数の研究をおこなった。permeability解析には、組織造影剤濃度の算出および血漿中の造影剤濃度の算出が必要である。ただし、血漿中の造影剤濃度の算出は、一般的なMagnitude imageでは、頭頸部領域では、流速が速いため、困難である。H24年度は、MRの位相イメージ(phase image)を活用を検討した。まず、流体ファントムをもちいて、造影剤濃度と位相差の検討をおこなった。ファントム実験としては、内径10mmのポアロンチューブに、定常流ポンプを用い、流量を調整し、水を循環させた。次にマグネビストを加え、濃度を0.21mMずつ増加させた。チューブと静磁場方向は垂直になるように設定した。撮像は、フィリップ社製1.5T MRIを用い、3D-T1FFE (TR/TE 6.1/4.6ms; FA,15°)にて撮像した。結果として、位相差と造影剤濃度には強い相関、高い直線性を示した。これは、造影剤濃度変化ΔCによる位相変化Δφの理論式 Δφ = TE π γ B0 χm ΔC (cos2θ-1/3)に従っている事が解明された。 ただし、γ:proton gyromagnetic ratio, B0:静磁場強度, TE:エコー時間, χm:造影剤の分子磁化率, θ:静磁場と血管のなす角である。 この結果をもちいて、臨床例において、顎顔面領域の腫瘤性病変のある27名を対象とし、頸動脈での動脈入力関数の算出をおこなった。体動、グラフの変動などより、5名が除外されたが、22名のデータは、比較的安定した変動をしめし、左右頸動脈での、動脈入力関数の相関はたかいものであった。本結果より、phase imageをつかった個人AIF, 集団AIFの検出の算出が可能になり、permeabilityの解析の精度も向上すると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファントム実験で、位相差と造影剤濃度の直線性を証明でき、臨床現場において、血管内の造影剤濃度(動脈入力関数)を算出できる糸口となった。実際に臨床症例においても、動脈入力関数の算出をおこない、今まで未知数であったMR造影剤濃度の算出の可能性がひらけた、動脈サンプリングなどの侵襲的な検査の代用になると考えられた。ただし、症例により、時間による動脈入力関数の変動の大きな症例、また、システム・撮像法などのエラーと思われる症例が5/27症例あり、今後、安定した結果を得る工夫が必要になると思われた。しかしながら、集団の平均的動脈入力関数を算出出来たことは、非常に大きな進歩と考えられる。 さらに、H25年度以降におこなう予定であった血管循環の評価であるarterial spin labeling法の基礎的実験を頭部領域であるが、行うことができ、血流量の算出に一定の目処をみた。本年度以降、同様の手法を顎顔面、頭頸部領域に拡大することは可能と思われた。
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今後の研究の推進方策 |
dynamic MR撮像の解析をメインとしたpermeability study(主に造影剤の組織間隙への染み出しを定量化する)に関しては、1. phase imageの改善、処理法の改善による動脈入力関数の精度の向上、2. phase imageを利用した症例を増やすことにより、より正確な平均的動脈入力関数の算定を行う。その結果を元に、頭頸部腫瘍の治療効果予測、治療判定や、放射線耳下腺障害など臨床評価にひろくpermeability studyを行うことを考えている。 次に、あらたなアプローチである動脈スピンラベリング(ASL)法の確立を中心に検討する。ASLは、支配血管の上流で、電気的に血液をラベリングした状態と、ラベリングなしの状態を比較することにより、対象臓器の血流量を求めるといった手法である。すでに頭部では、一定の成果をおさめているものの、頭頸部のおける最適な撮像法の確立、解析方法の確立を行い、次に臨床応用を考えている。特にpermeability study とperfusion studyをあわせて行うことにより、組織、病変の中の循環動態をより詳しく解明できると考えている。
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次年度の研究費の使用計画 |
現時点で、臨床的にphase imageの安定性が十分でないため、その理由の解明、対処法の確立のため、流体ファントム実験を続ける。基礎実験として、ファントム改良、解析ソフトの改良のための予算が必要である。また、動脈ラベリング法に関しては、解析装置の購入が必要である。さらに動脈ラベリング法の撮像法決定、解析法決定などのボランティア実験には、病院MR装置の使用料、参加ボランティアの保険料を予定している。臨床研究として、免疫染色の予算を想定している。 さらに、研究結果は、H25年度に関しては、3名の研究者の学会旅費、関連論文の校正料などを予定している。
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