研究課題/領域番号 |
24592834
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
筑井 徹 九州大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (10295090)
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研究分担者 |
徳森 謙二 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40253463)
河津 俊幸 九州大学, 大学病院, 助教 (20294960)
吉浦 敬 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40322747)
樋渡 昭雄 九州大学, 大学病院, 助教 (30444855)
加美 由紀子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (60552023)
川野 真太郎 九州大学, 大学病院, 講師 (00398067)
吉浦 一紀 九州大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (20210643)
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キーワード | 薬物動態解析 / permeability |
研究概要 |
permeabilityの研究において、血漿中の造影剤濃度(動脈入力関数 AIF)の算出が必要であるが、頸部では血流速の早さなどもあり、算出が困難であった。また臨床で使用される2ml/sの注入時における頸部でのAIFは、平均的な値の報告すらほとんどない状態であった。昨年度より、MRIの位相情報に注目し、ファントム実験を継続し、位相変化から得られる造影剤濃度と実際の濃度に高い相関がある事を証明した。本年は、57検査に対して左右内頸動脈(ICA)をAIF測定ポイントとした際のpermeabilityの各パラメーターの変動に関して評価した。左右のICA をAIF の計測点とし、AIFおよび薬物動態解析による病変部のパラメーターの算出を行った。AIFのpeak 値およびpeak までの時間(peak time) は、左右頸動脈を測定部位とした場合に、変動が少なかった。(RSM Cov: peak=0.063, peak time=0.014)。一方、蓄積する誤差のため、撮像後半の平衡相での変動は、左右内頸動脈で大きかった。このことを反映し、特にAIF の立ち上がりの部分に関わるKtrans(血漿から組織への移行係数)の変動は比較的小さいものの、平衡相のAIF が大きく関わるve(血管外細胞外腔の割合) は、変動が大きかった。現時点では、平均的なAIFを求め動脈入力関数とする事が望ましいと考えられたため、平均的AIFを算出したが、Parkerの報告(オムニスキャン3ml/sの高速注入)とWeinmannの報告(マグネビス ト持続点滴 血液サンプリング)の中間となり、妥当なものと考えられた。 臨床的な応用として平均的AIFを用いて、術前放射線治療前後における耳下腺損傷の評価をおこなった。耳下腺の平均照射線量が増えるとve (血管外細胞外腔の割合)が増える事、すなわち腺細胞が減少する事が証明され、耳下腺の急性期放射線障害の評価に有効という結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ファントム実験で、位相差と造影剤濃度の直線性を証明でき、臨床現場において、位相イメージを用い、血管内の造影剤濃度(AIF)を算出、薬物動態解析を行った。多くの症例で、頸動脈分岐部や強く屈曲する部分をさけ、血管が上下的に走行する部分を選択する事により、AIFの算出が可能となったが、一部の症例では、設定部位の違いによる変動が大きく、個人のAIFを算出する事は困難であった。しかし、今までほぼ未知数であった頸部の平均的造影剤濃度を把握する事ができ、症例を蓄積し得られたデータは、以前の動脈サンプリングのデータなどから考えても妥当なものと判断された。この事は、大きな進歩と考えられる。現在までに平均的AIFの算出、平均的AIFを用いた頭頸部鑑別診断(論文投稿中)、術前治療の効果判定、急性時耳下腺損傷の評価への応用(論文投稿中)と一定の成功をおさめている。 さらに、血管循環の評価であるarterial spin labeling法の基礎的実験を頭部領域で行い、咬合に伴う脳内血流動態の変化を解析している。本年度以降、同様の手法を顎顔面、頭頸部領域に拡大し、permeabilityの結果と合わせて検討していく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的にpermeabilityの有効性を解析してきたが、実際の組織との対応を行う。組織切片より細胞・間質の占める割合、細胞数・細胞の大きさの算出を行い、 permeability studyのveとの相関の検討を行う。また免疫染色による血管増生能とktransとの相関を検討する。 支配血管の上流で、電気的に血液をラベリングした状態と、ラベリングなしの状態を比較することにより、対象臓器の血流量を求めるといった手法 (動脈スピンラベリング:ASL)を新たに顔面部病変に用いて、病変の血流量を求める。Permeabilityのstudyと泡失せて検討し、血管増生能との関係を総合的に評価する予定である。 く
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は、ファントム実験と画像解析のみ行い、組織学的な評価を行わなかったため、組織切片作成、染色にかかる費用を支出しなかった。さらに、主要な学会の一つが福岡であったため、旅費が低く設定できた。 組織切片作成、染色に関わる費用、画像解析用のアプリケーション・画像データ保存装置の購入予算を予定している。さらに、成果発表として国際学会1回、国内学会2回分の旅費、論文の英文校正量を予定している。
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