研究課題/領域番号 |
24592835
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉野 真弓 (清水 真弓) 九州大学, 大学病院, 講師 (50253464)
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研究分担者 |
河津 俊幸 九州大学, 大学病院, 助教 (20294960)
岡村 和俊 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20346802)
大山 順子 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70294957)
森山 雅文 九州大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (20452774)
阿部 光一郎 東京女子医科大学, 医学部, 准教授 (00380387)
馬場 眞吾 九州大学, 大学病院, 助教 (80380450)
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キーワード | 近赤外線 / MR-sialography / 超音波 / 唾液腺シンチグラフィー / シェーグレン症候群 / 非侵襲 |
研究概要 |
シェーグレン症候群の厚生労働省の診断基準のうち、唾液腺の画像検査としては唾液腺造影法と唾液腺シンチグラフィーが採択されている。しかしながら、唾液腺造影は感度や特異度は高いが浸襲的であり、唾液腺シンチグラフィーは感度・特異度がやや低い上に、簡便とも言い難い。また両法とも被曝を伴うという欠点がある。近年MR-sialographyや超音波診断法といった非浸襲的なシェーグレン症候群の診断法が研究されている。これらは正診率は唾液腺シンチグラフィーより上であるが、初期変化の検出に関しては唾液腺造影に及ばず、未だ唾液腺造影に置き換わるに至っていない。 そこで、近赤外線組織酸素モニタ併用超音波診断、MRI診断が中心の、シェーグレン症候群の非侵襲的な画像診断法の確立を目的とした研究を立案した。近赤外線組織酸素モニタにより組織損傷程度を数値化し、客観性が脆弱な超音波検査を補完する。またMRIでは従来のMR-sialographyにMSDE法を応用し、血流信号の抑制により末梢導管拡張の描出能向上を図る予定であった。シェーグレン症候群の同一患者の治療経過を、これらの非侵襲的な画像診断法で縦断的に画像化することにより、臨床経過と対比し、診断精度の向上を試みる予定である。 平成25年度はOmegawave社の近赤外線組織酸素モニタを用い、正常者での基礎データ取得を行った。顎下腺ではばらつきが大きいが、酸刺激後の耳下腺にはOxy-Hbの上昇傾向が認められた。 MR-sialographyに関しては通常のT1強調画像、T2強調画像、MR-sialographyの撮像に加え、MSDE法を試行したが、有意な差は認められなかった。 また非侵襲的な上記の検査と比較する現行の検査、唾液腺造影、唾液腺シンチグラフィーのうち、明確な基準のない唾液腺シンチグラフィーに関しては、正常値の検討を行う必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
近赤外線組織酸素モニタでのデータ取得:正常ボランティアでのデータ取得を行った。酸刺激に対する反応および刺激後の回復時間は個人差が大きく、耳下腺と顎下腺で異なり、耳下腺では酸刺激後のOxy-Hbの上昇が認められる傾向にある。シェーグレン症候群患者群との比較が必要であるが、今年度は患者群のデータは取得できていない。 MR-sialography:他施設のプロトコールを参考に改良を加え、現在、診断に寄与する程度のT1強調画像、T2強調画像、MR-sialographyの撮像が行えるようになっている。正常ボランティアに上記シークエンスの他、MSDE法を応用し、血流信号の抑制により末梢導管拡張の描出能向上を図る予定であった。が、MSDE法と通常のT2強調画像で、有意な差は認められなかった。 唾液腺シンチグラフィー:前年度、唾液腺シンチグラフィーに明確な診断基準を作成することを目標に、甲状腺腫瘍のRI治療前の患者群(唾液腺は正常)を正常群とし、シェーグレン症候群を疑ったが否定された群(Non-SS群)との比較を行った。顎下腺には差異は認められず、排泄試験に関して反応を示さない症例を除外した顎下腺のNon-SS群は正常群を代用できるのではないかと考えられたが、甲状腺腫瘍による唾液腺の機能低下の存在が判明し、正常群としての適正が疑問視された。正常群に関しては再検討の必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
近赤外線組織酸素モニタでのデータ取得と超音波像の対比:正常者のデータ取得を下記と併せて当院倫理委員会への研究申請を行い、承認された後は、当科スタッフ約10名をボランティア被検者として安静時および酸刺激後の組織酸素飽和度を測定し、ある程度の正常者の傾向を見出す。その後、各人の超音波検査を行い、正常者における安静時および酸刺激後の組織酸素飽和度と超音波像(B-mode, Doppler-mode )での像および血流量の変化の対比を行う。さらに患者群に応用し、シェーグレン症候群、シェーグレン症候群以外の口腔乾燥症、IgG4関連涙腺唾液腺炎(いわゆるミクリッツ病)での差異について検討する。 MR-sialography:MSDE法にて期待した結果が得られなかったため、脂肪抑制法を合わせての唾液腺組織損傷の定量化を試みる。その後、上記と併せて当院倫理委員会への研究申請を行う。承認後に上記ボランティア被検者にT1強調画像、T2強調画像、MR-sialography、脂肪抑制法による撮像を行う。さらに患者群に応用する。 唾液腺シンチグラフィー:甲状腺腫瘍のRI治療前の患者群を正常群とすることに問題が判明したため、SS群とNon-SS群(シェーグレン症候群を疑ったが否定された群)のデータを再分析し、判別分析にて判別点を求める。その後、別の患者群にprospective studyを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は倫理委員会の申請が間に合わず、ボランティアへの謝金として予定していた分が使用されなかった。 次年度分の研究費は、ボランティア被検者への謝金に当てる予定である。 成果発表を国内学会で行う際の旅費にも使用予定である。
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