研究課題/領域番号 |
24592836
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
西下 一久 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20237697)
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研究分担者 |
坂井 詠子 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (10176612)
岡元 邦彰 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (10311846)
筑波 隆幸 長崎大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30264055)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 免疫 / 感染 / 炎症 / プロテアーゼ |
研究概要 |
近年のシーケンス技術の爆発的な進歩につれ広く行われるようになった網羅的なゲノムシーケンシングにより、広い生物種における遺伝子の欠失や重複をデータベース中から見いだすことが可能になった。ある遺伝子がゲノムデータベース上の脊椎動物種すべてで見いだせるのであればそれは脊椎動物の生存に必須であり、逆に特定の種でのみ保存されている遺伝子は種特異的な生理機能を有していることが類推できる。すなわち比較遺伝学的アプローチは遺伝子ノックアウトマウス作成による研究に匹敵する洞察を得ることができる。 カテプシンEが属する哺乳類アスパラギン酸プロテアーゼスーパーファミリーメンバーをデータベース上から抽出して分子進化系統樹を作成し、本年度はヒト特異的に偽遺伝子化しているNapsin Bの成果を主として論文執筆した(Nishishita K, et al., Gene 517, 147, 2013)。 カテプシンE遺伝子については、反芻動物とブタ、さらにカモノハシにおいて欠失していた。カテプシンEを発現している他種の動物との生理的相違点に着目すると、以下の2点が顕著であった。 1.反芻動物特有の第一胃では常在微生物による食物発酵が行われ、後胃で分泌される酸とペプシンで微生物を消化・殺菌し、セルロースや微生物産物を栄養として用いている。 2.カモノハシはカテプシンEやペプシン遺伝子群が欠失していると同時に解剖学的な胃が欠損している。一方で、特有の抗微生物ペプチド群による感染防御機能が発達している。 すなわちカテプシンE欠失種の生理的な特異性より、消化管粘膜を主たる活躍の場とする抗微生物ペプチド群の活性化・分解へのカテプシンEの関与が示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画のカテプシン欠損と野生型マウスとの比較において広汎網羅的な基質タンパク質のスクリーニングを行う、という実験アプローチから部分的に方向転換を図り、候補となる基質タンパクの絞り込みをすることができたため。
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今後の研究の推進方策 |
カテプシンEについては消化管の抗微生物ペプチド群(AMPs)に焦点を絞って研究を行なう。具体的には野生型マウスと欠損マウス由来のカテプシンEが豊富な組織についてウエスタンブロッティングにてAMPsの蓄積やプロセシング不良による減少の有無を検討する。さらにカテプシンE欠損マウスの慢性炎症の発生がAMPsの減少によるものでないかを細菌感染実験により解析する。 カテプシンCについては脊椎動物システインプロテアーゼスーパーファミリーメンバーをデータベース上から抽出して分子進化系統樹を作成し、比較遺伝学的に基質となるタンパク質や活性ペプチドの絞り込みを試みる。 翌年度以降に請求する研究費が生じたが、年度末に金額あわせのため調整的な発注をしなかったためであり、次年度以降の研究遂行に備えて意図的に残した金額ではない。次年度繰越額は、予算の1%以下の\14,280で、本年度中に使用した金額は予算のほぼ全額に相当することから、計画から大きく外れた研究費の使用ではない。
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次年度の研究費の使用計画 |
薬品(\14,280)
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