研究課題/領域番号 |
24592843
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
今井 健一 日本大学, 歯学部, 准教授 (60381810)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | EBV / 歯周病 / P. gingivalis / 潜伏感染 |
研究概要 |
歯周病は成人の80%以上が罹患している細菌感染症である。近年、歯周病が誤嚥性肺炎などの全身疾患の原因となることが明らかとなり、超高齢化社会を迎えるわが国において歯周病対策はより重要となる。最近、進行性や難治性の歯周病の発症にEBウイルス(EBV)が関与するとの興味深い臨床報告が多数なされているが、病態の形成にEBVがどのように関与しているかについては不明である。 EBVは潜伏感染状態にあるため、病気の発症に関与するには、まず潜伏ウイルスが再活性化される事が必須である。最近の研究から、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)によるクロマチンレベルでのEBV潜伏感染機構が明らかとなってきたが、一方で生体内においてどのような状態(病態)が潜伏感染の破綻を引き起こすかは不明である。今年度は、EBV潜伏感染細胞であるAkataやDaudi細胞に菌体、もしくは菌の培養上清を添加し再活性化に必須である転写因子ZEBRAの発現を検討した。その結果、歯周病原菌、P. gingivalisやFusobacterium nucreatumがHDAC阻害作用を有する酪酸を放出する事でZEBRAの発現を誘導し、EBV複製を促進している事を示した。酪酸以外の物質にEBVの活性化作用はみられなかった。歯周病原菌によるEBV活性化が転写レベルで起こっているか否かを検討するために、ZEBRAプロモーターを安定的に導入したB95-8 EBV感染細胞を用いてLuciferase assayを行った結果、歯周病原菌は転写レベルでZEBRAを誘導している事が解った。細菌とウイルスの微生物間相互作用が、EBVの再活性化とその後の病態形成に関与している事が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究課題は大きく2つに分けたが、そのうちの1つの課題である「歯周病原菌によるヒストン修飾を介する潜伏感染EBV再活性化メカニズム」に関して、いくつかの学会で毛研究成果を発表すると共に、論文として公表する事が出来た。
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今後の研究の推進方策 |
2年目の本年度は、潜伏感染EBVの詳細な活性化機構を明らかとすると共に、活性化したウイルスがどのように歯周病の病態に関与するのかについて重点的に研究を行う。具体的には、 1)潜伏感染細胞内ZEBRAプロモーター上でのダイナミズム: 実際に感染細胞内でのHDAC1やアセチルヒストンH3の動態と転写活性化との関連性を調べる。具体的には、EBV潜伏感染細胞と種々の修飾ヒストンH3抗体、またこれまでプロモーターへの結合が報告されているHDAC-1-2,-7の特異抗体を用いてChIP assayを行い培養上清添加前後での変化を比較する。 2)ウイルスによる炎症性サイトカイン誘導作用の解析:ウイルスによるIL-6やIL-8の誘導能はELISAにて定量すると共に、mRNAレベルでの発現を確認するためにリアルタイムPCRを行う。3)ウイルス誘導性サイトカイン産生におけるToll-like receptor(TLR)/MyD88の関与:これまでに他のヘルペスウイルスのエンベロープ蛋白がTLRを認識する事が報告されているが、EBVがTLRをレセプターとしている可能性がある。従い、種々のTLRに対する中和抗体を用いて、歯肉線維芽細胞と歯肉上皮細胞におけるEBV誘導性サイトカイン産生におけるTLRの関与を調べる。TLRの関与が確認された場合、そのアダプター分子であるMyD88の関与と共に、現在作成中のTLR強制発現細胞株、及びドミナントネガティブ(DN)-TLR、DN-MyD88プラスミドを用いた確認実験を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は新たに、潜伏感染細胞内ZEBRAプロモーター上でのダイナミズムをChIP assayにて解析するために、新たに種々の特異抗体およびChIP assayキットを購入する。ウイルスによる炎症性サイトカイン誘導作用解析において、IL-6やIL-8を定量するためにELISAキットを新たに購入する。その他、新規のプラスミド構築やプラスミドの細胞への導入試薬など、主に消耗品として使用する。また、研究成果の発表と公表のために学会参加旅費と参加費と論文作成、及び論文作成関係費(英文校正や掲載料、別刷代)を計上する予定である。
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