研究課題/領域番号 |
24592843
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
今井 健一 日本大学, 歯学部, 准教授 (60381810)
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キーワード | EBV / 歯周病 / 根尖性歯周炎 / 潜伏感染 |
研究概要 |
歯科の二大疾患である歯周病と齲蝕はともに細菌感染症であり、齲蝕が進行すると炎症が歯根にまでおよび根尖性歯周炎が発症する。歯周病は世界で最も蔓延している感染症であるが、近年、歯周病が誤嚥性肺炎などの全身疾患の原因となることが明らかとなり、超高齢化社会を迎えるわが国において歯周病対策はより重要となる。また歯周病と根尖性歯周炎は歯を喪失する最大の要因となることから、QLO維持のためにも両疾患の病因の解明と新規治療法の開発は重要である。近年、進行性や難治性の歯周病および根尖性歯周炎の発症にEBウイルス(EBV)が関与するとの興味深い臨床報告が多数なされている。歯周ポケットや唾液仲のEBV量と歯周病の進行度が相関しており、特に重症の歯周疾患ではその関連性はより高くなる。また、歯周病原菌の量とEBVのDNA量も相関関係にあることが報告されている。しかしながら、わが国においてはEBVの検出をおこなった臨床研究はない。またEBVが歯周疾患の発症にどのように関与しているのか?この問題に関しては具体的な報告は一切ない。本年度は、EBVによる歯周疾患発症の分子機構について継続的に取り組んだとともに、歯周病と根尖性歯周炎患者の病変からのEBVの検出をPCR法を用い試みた。その結果、進行性の歯周疾患においてEBVのDNAが有意に検出された。また、EBVのEBERがB細胞の局在と一致して認められたことから、日本人においてもEBVが歯周疾患の進行に深くかかわっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
大きく分けた研究課題の2つとも順調に進行していると共に、患者からのEBV検出も試みEBVと歯周疾患の関連に関して基礎から臨床的研究まで広く発展した。また、学会発表で成果を報告すると共に、論文としても発表することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、歯周病患者とEBVの関連性に関しては論文として発表することができたため、引き続き根尖性歯周炎患者からのEBVの検出解析をすすめ論文としてまとめる。またEBVによる歯周疾患発症と進展のメカニズムに関しては、最後に残された課題であるEBVによる炎症性サイトカイン誘導におけるTLRとNF-κBの関与を中心に解析をすすめる。炎症性サイトカインの誘導には、転写因子NF-κBの活性化が最も重要であることが知られている。この点を調べるために、細胞を刺激した前後で核抽出液を調整し、抑制因子IκBaやNF-κB p65などの状態を各抗体を用いたWB法にて、またNF-κBプロモーターへの影響をルシフェラーゼアッセイにて調べる。さらに、実際の細胞内IL-6プロモーター上での各分子のダイナミックな動態を、ChIP assayにて検討し転写レベルでサイトカインが誘導されているか否かを調べる。さらに、EBVの歯周疾患発症への関与を証明するために、ヒト化マウスを用いた動物実験を開始する準備を行う。具体的にはヒト化マウスの歯肉、歯根内にEBVを確実に作用する技術を習得し、動物実験の基盤を作る。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に購入した分子生物、生化学解析関連の試薬等で効率よく研究が行えたため、また今年度は臨床研究も行っていたため試薬やシャーレ等の消耗品があまり必要でなく残金が生じた。 本年度に行う、EBVによる炎症性サイトカイン誘導におけるTLR- NF-κBシグナリングの関与の解明研究のために、あらたに関連抗体とChIPアッセイのキットを購入する。また、成果発表のための国内旅費および論文投稿費として使用する。
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