近年,Epstein-Barrウイルス(EBV)と歯周病発症との関連性を示す興味深い臨床研究データが複数の施設から報告されている。われわれは、これまでに歯周病変部からEBVが検出されること、歯周病原菌が酪酸を介して潜伏感染EBVを再活性化することを報告してきた。歯周病の主な原因が宿主側に求められる中,宿主細胞内に寄生し免疫機能低下を誘導するウイルスがその発症に関与するという説は,これまで細菌感染のみでは説明が困難であった歯周病の病因論確立に繋がる可能性がある。しかし,ウイルスがどのように病態形成に関与しているのか,その具体的な分子機構に関しては世界的に報告がない。 実験の結果、感染性をなくしたEBVは歯肉線維芽細胞やマクロファージからから大量の炎症性サイトカインを誘導する事を見出した。詳細な解析を進めたところ、EBVによる炎症性サイトカイン産生にはNF-kBや一部のMAPKが関与していることが明らかとなった。歯周疾患の発症と進展において,炎症性サイトカインは骨吸収への関与など中心的な役割を演じる。これまでのわれわれの一連の研究成果から、EBVは局所および全身の相乗的な作用により歯周病の発症と進展に深く関与している可能性がある。
|