研究課題/領域番号 |
24592844
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
金田 隆 日本大学, 歯学部, 教授 (40185947)
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研究分担者 |
小椋 一朗 日本大学, 歯学部, 講師 (30349972)
森 進太郎 日本大学, 歯学部, 講師 (40419792)
岡田 裕之 日本大学, 歯学部, 准教授 (70256890)
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キーワード | パラメトリックエックス線 / 位相コントラストイメージング / X線吸収端 / 画像診断 |
研究概要 |
本学のLEBRA加速器実験施設はパラメトリックX線の発生成功からまだ日が浅いが、その先進的かつ独創的な加速器応用施設の設計ならびにこれまでの成果から国内はもとより海外の超大型放射光施設と肩を並べることができる極めて優れたものであることが海外からも高く評価されている(2005-2008年の間に海外英文学術雑誌に発表した5論文の引用回数:28、ISI Web of Science)。 1)位相コントラストイメージング:高性能X線CCDカメラ(現有機器)、イメージングプレート(現有機器)、X線フィルム(消耗品として現像薬品とガラス器具を購入予定)などのX線検出系をもちいて、電子材料から培養細胞、インプラントおよび歯科材料、生 体物質、化石骨まで多様な対象物を撮影し、従来型レントゲンとの比較を行う。コヒーレンス性の確証実験でもある。2013年6月24日のThe 19th International Congress of Dento-Maxillo-Facilal RadiologyにてA basic study of the LEBRA-PXR: New expected X-ray source for diagnostic imaging を発表した。 2)X線吸収と吸収端:X線波長の変化に伴う元素固有のX線吸収曲線による組成分析とX線吸収端微細構造(XAFS)についてLEBRA-PXR では他所と違って1枚で撮影できる優越性がある。この特徴について確証実験を行う。また、逆に従来理論的に導かれてい たX線吸収曲線を実測する。 3)X線の生物学的効果: 細胞や組織がX線によるダメージを受けることは知られているが、X線波長依存性については研究例が少なく、この関係が明らかになると、X線検診、乳がんのマンモグラフィー、X線によるガン細胞治療などに新たな道が拓かれる。また、「Clinical application of parametric radiation based X-ray (PXR): Preliminary study」についてもThe 19th ICDMFRにおいて発表し、論文を作成中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)PXRによる位相コントラストイメージングについて 切除されたイヌ顎骨の悪性腫瘍(骨肉腫)を用いた。同切除標本を(12keV, 15keV, 18keV, 21keV, 24keV, 27keV, 30keV)の波長のLEBRA-PXRを線源に用いて撮影を行った。検出装置にはYCR21(株式会社 吉田製作所)を用い,従来の単純エックス線撮影で得られた画像(43kV,125mA,40msec)を対照に用いた。撮影後,病理組織像を作製し,腫瘍領域を確認した。エックス線の吸収率を画像化する従来のエックス線診断と異なり,位相コントラスト・イメージングによる位相の揃ったX線を使うことにより,従来の白色X線を使った単純X線透過吸収像とは異なる腫瘍イメージを得ることが可能となった。位相コントラストは物質のX線吸収係数の差を見ているのではなく,X線屈折率の差を見ているため,軽元素領域で吸収コントラストの約1000倍の感度を有することより,位相差光学顕微鏡で細胞を無染色で観察するのとにて,特に軟組織などの観察に適していた。今回のように軟組織主体の悪性腫瘍への新規分子イメージングの可能性とその画像診断への有用性が示唆された。X線の透過率(吸収)ほど波長依存性が強くないため,軽元素領域で吸収コントラストの約1000倍の感度を有するため,生体軟組織の画像化が可能と示唆された。 2)PXRによるX線吸収と吸収端について吸収端を利用した元素イメージングを恐竜の卵で施行し,Srの存在が確認された。同データはエネルギー可変可能な単色X線線である PXRのみ可能な元素イメージングであることが立証もされた。 3)PXRによる生物学的効果 PXRの生物学的効果は培養組織にPXRを短時間照射し,その後の反応を観察した。同検討は波長の変更も行いながら,PXRを照射し,従来のエックス線照射との違いをさらに検討中である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度はLEBRA-PXRの基本的なX線特性を充分に引き出して、それを応用実験に適用する場合の実際上の諸問題を洗い出し、解決へ導く年度とする。初年度に行った確証実験を継続するとともに、それを基盤として以下のような新たな応用実験を組んでいく。なお、 この総合研究は「クラスリン型」とも言うべき新しい組織活性方略を目指しており、その方針に沿って平成26年度は研究グループと構成員の入れ替えを行っていく。また、LEBRA-PXR光源の加速器からPXR発生装置および撮影装置の整備・調整には早川建・早川恭史(理 工学部)・田中俊成(量子科学研究所)があたり、LEBRAの中尾圭佐(理工学部・助)・野上杏子・稲垣学(量子科学研究所・PD)の協力を得て行う。PXR発生の鍵となるSi結晶は電子線による損傷を受けるため、位相コントラスト撮影に欠かせない第3結晶のSi結晶もより広範囲が撮影できるような大型結晶を新規に購入(消耗品)する。 X線位相コントラストCT・断層イメージング:位相と屈折効果を利用することで、医療で行われているX線断層写真のようなイメージを得ることができる。通常のX線CTあるいは断層写真と同様の撮影はマウス心臓を用いてすでに成功している。今後は、実用に耐えうる解像度の追及と、撮影条件の探索が急務と考えている。(金田隆、小椋一朗の研究グループ) 定量X線イメージング: 単色X線であることから物質組成に応じた吸収が求められ、しかも波長可変であることから多成分分析が可能となる。(田中俊成、岡田裕之の研究グループ) 超高精細位相コントラストX線イメージング:位相と平行性をかね揃えたLEBRA-PXRでは検出器の性能限界まで超高精細なイメージが撮像可能である。(早川建、金田隆の研究グループ)
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次年度の研究費の使用計画 |
海外での学会発表に出席予定だったが、日程の関係で今年度は出張を見合わせたため、旅費分が残ってしまった。 海外での学会発表に出席予定する予定であるため、旅費として使用する予定である。
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