国際放射線防護委員会(ICRP)は放射線診断における患者防護の最適化を促進するため、広く行われている検査に対して診断参考レベル(DRL)の利用を勧告しているが、日本では歯科用コーンビームCT(CBCT)のDRLはまだ報告されていない。そこで、今年度は、昨年度の研究実績で報告した全国29大学歯学部・歯科大学附属病院(附属病院)におけるCBCTの線量のアンケート結果をもとにDRL線量の設定を行った。 面積線量(DAP)は、CT用ペンシル型電離箱(Radcal社製10X5-3CT)/線量計(Radcal社製9015)とCT用線量測定用頭部標準ファントムを用いて、各種歯科用CBCTの空中CT線量指数と空中線量-長さ積を測定し、これらの値から導いたもの、および面積線量計PTW-Freiburg社製Diamentor M4とDiamentor M4-KDKを用いて測定したものの2種類である。次に、DAPをFOVの面積で除した空気カーマ(mGy、ミリグレイ)、つまりFOV面積で規格化した回転中心での空気カーマを求めた。DRL線量は、DAPと空気カーマに対する撮影件数分布の第3四分位数とした。 各FOVおよび全FOVに対するDRL線量を評価した。一例として、4×4 cm FOVにおけるDAPおよび空気カーマによるDRL線量を示すと、15歳超、15歳以下、全患者でそれぞれ470、420、460 ミリグレイ平方センチメートルおよび29、27、29 ミリグレイとなった。 保健防護庁(HPA)は、4×4 cm FOVで標準的な成人患者に対して上顎第一大臼歯部インプラント埋入を撮影目的とする場合、「達成できる線量」としてDAPで250 ミリグレイ平方センチメートルを勧告している。今年度得られた15歳を超える患者のDRL 470 ミリグレイ平方センチメートルは、全ての撮影目的や部位を包含しているため、HPAの約2倍であった。なお、250 ミリグレイ平方センチメートルの割合は、15歳超で0.13 %、15歳以下で23.0 %および全患者で4.0 %と非常に低い値を示した。
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