研究概要 |
(1)試験管内移植片対宿主病(GVHD)モデルとして、Ly5.1接合C57BL/6マウス(H-2Kb)のリンパ球とC3H/HeN(H-2Kk)のリンパ球をex vivoで混合培養した。そして、このex vivoリンパ球混合培養48時間後の培養上清中のIFN-γ濃度をELISA法により測定した。さらに、このex vivoリンパ球混合培養に、BALB/cマウス(H-2Kd)脂肪組織より分離した間葉系幹細胞を加え、間葉系幹細胞数依存的にIFN-γ産生は抑制されることを明らかにした。また、対照実験としてBALB-3T3細胞を加えた場合、IFN-γ産生が抑制されなかった。IFN-γはGVHDの病態に関連する。すなわち、この間葉系幹細胞のIFN-γ産生抑制能は、間葉系幹細胞のGVHD抑制能に関与することを明らかにした。GVHDに限らず、IFN-γ産生が患者の病態に関与する種々の疾病に、間葉系幹細胞のIFN-γ産生抑制能を応用できると期待される。 (2)上記のex vivoリンパ球混合培養に、自己認識抗原(H-2K)が異なるBALB/cマウス(H-2Kd), C57BL/6マウス(H-2Kb), またはC3H/HeNマウス(H-2Kk)の脂肪組織より分離した間葉系幹細胞を加え、培養後の培養上清中IFN-γ濃度を測定した。いずれの系統由来の間葉系幹細胞を用いた場合でも、IFN-γ産生は抑制されることを明らかにした。移植片に付随したリンパ球と同系統(Ly5.1接合C57BL/6系統),宿主と同系統(BALB/c系統), そして移植片と宿主いずれとも異なる系統(C3H/HeN)いずれの間葉系幹細胞も、GVHDに関連するIFN-γ産生を抑制することを明らかにした。GVHDに限らず、IFN-γ産生が病態に関与する種々の疾病に、患者とは自己認識抗原が異なる間葉系幹細胞を応用できると期待される。
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