研究課題
舌扁平上皮癌患者18名(全例術前治療なし)の術前口腔内超音波像を対象とし、腫瘍辺縁像と腫瘍内外の血流像を定量解析した。腫瘍内外の血流信号を定量評価するために、以下の3つの指標を新たに作成した。1.腫瘍内部を占める血流信号の割合(ratio of blood flow signal area within the cancer to whole tumour area: BAR)2.腫瘍辺縁における血流貫通部位数の割合(blood flow signal number ratio: BNR)3.腫瘍辺縁における血流貫通域の割合(blood flow signal width ratio: BWR)。これらの3指標および腫瘍深達度と頸部リンパ節転移の有無および浸潤様式(山本-小浜分類: YK分類)との関連をそれぞれ統計学的に評価した(Mann-Whitney U検定)。BARと腫瘍深達度については、頸部リンパ節転移の有無やYK分類との間に有意な相関が認められなかったが、BNRとBWRについては頸部リンパ節転移の有する症例で有意に高値を示した(いずれもp < 0.01)。また、YK-4症例ではYK-2もしくはYK-3症例よりも有意にBWRが高値であった(p < 0.05)。さらに、頸部リンパ節転移の有無に関してBNRとBWRの診断能を検討するためにROC解析を行い、両者とも同等の良好なAUCと正診率が得られた。BWRはBNRと比較して、感度は優れていたが特異度が低かった。この原因として、血管幅径は血管新生とは無関係の循環障害(充血やうっ血など)により容易に増大するため、false positiveが上昇したためと考えられた。以上より、口腔内超音波ドプラ像を定量評価するために舌悪性腫瘍先端部の血管新生を反映する指標として考案したBNRとBWRは、腫瘍悪性度や頸部リンパ節転移を予測する指標として有効であると考えられた。
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Dentomaxillofacial Radiology
巻: 45 ページ: 未定
10.1259/dmfr.20150372