歯は自己修復能力が低いため、人工修復材料により保存修復される。人工修復材料として用いられているのが、金属、レジン、セラミックなどである。その中で金属が頻用されており、患者のQOLを満足させてきた。しかし、ごく一部の患者においては金属アレルギーの誘発など問題を抱えている。さらに、ピアスやネックレスなどの装飾品をつける人も増えたことから、金属アレルギーは増加の一途にある(平成19年度の厚生労働省の報告による。)。これまでの研究で、金属アレルギーは金属イオンが生体内タンパクと結合することにより抗原となっておこるIV型アレルギーとして位置づけられているものの、その分子機構はいまだわかっていない。金属は、そのままでは疾患は引き起こさず、溶出してイオンとなること、その金属イオンが生体内タンパクと結合することが、疾患の原因となっている。 したがって本研究は、アレルギーの原因となる金属イオンの動態を明らかにすることを目的とした。 金属イオンの動態を明らかにするため、ニッケルイオンの可視化に取り組んできた。比色法も考えられたが、顕微鏡やフローサイトメトリーでの解析ができれば、将来的に免疫学的なアプローチが可能となることから、蛍光での検出を試みた。ニッケルイオンの蛍光検出ができたことから、定量的かつ視覚的に解析することが可能となった。さらに、動物への埋め込み金属におけるニッケルの溶出についても、検出することができた。
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