歯髄組織再生においては、血管新生が再生の速度を早めるために重要な因子と考えられるが、これに関与するバイオマーカーは多数あり、その関与の実態に関する詳細は不明である。本研究では、申請者がこれまでに培った実験技法・培養法・組織再生手法を組み合わせ、ラットの下顎第一臼歯の歯髄腔内で血管新生関連バイオマーカーが歯髄再生に対して果たす役割を、免疫組織化学および分子生物学的手法を用いて検索し、歯髄を速やかに再生するために重要となる血管新生関連バイオマーカーを検証することを目的として実施した。 その結果、血管新生関連バイオマーカーのひとつである繊維芽細胞増殖因子や血管内皮細胞増殖因子が速やかに歯髄組織再生を促すために重要な因子であり、そのため幹細胞と血管内皮細胞を混合移植すると、幹細胞単独の場合よりも、組織再生が促進されることを確認してた。 また、幹細胞から分化したマクロファージが、成熟した再生歯髄組織中では、組織修復マクロファージ(M2マクロファージ)として存在し、常在性マクロファージとして組織恒常性の維持に関与することを報告した。 さらに、ラット臼歯冠部歯髄には、CD146MAP1B陽性の幹細胞が、歯根歯髄や歯根膜に比べ多数存在することを報告した。 以上の結果を報告し、日本歯内療法学会ワカイ賞を受賞し、そして日本歯科保存学会優秀ポスター賞を受賞した。
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