研究課題/領域番号 |
24592864
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
庭野 和明 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (80301183)
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キーワード | シミュレータ / 根管形成操作 / トルク / 荷重 / パターン抽出 / 正規表現 |
研究概要 |
本課題は根管形成時に根管模型へ作用するトルク、荷重をひずみゲージをセンサとして200Hzでサンプリングを行い、モニタ上にリアルタイムでトルクをx軸、荷重をy軸とする2次元直交座標のデータ点として描記する装置の開発、および同装置を用いて自己操作のデータ点軌跡視認下での特定の根管形成操作(Watch-winding motion)訓練が同操作の技能向上に及ぼす影響について検証し、シミュレータとしての使用可能性を検討するものである。 25年度は2次元直交座標上のデータ点運動パターン評価について検討を進めた。 座標平面上の各データ点は時間順序を有しており、その単位時間での座標変化は座標平面上の速度と考えることができる。また、その速度はデータ点のトルク、荷重値と各々の隣接するサンプリング時刻データ値との差分を成分とするベクトルにより表される。トルクおよび荷重のデータ差分を算出後、正、負、ゼロに分類した。次に3分類されたトルク差分と荷重差分を組み合わせて9種類の速度状態を定義し、各サンプリング時刻の速度状態を求めた。ここで視点を変え、座標平面上のデータ点移動を速度状態間の遷移として捉えれば、ベクトル量から離れて、速度状態を名義変数として扱うことが可能である。各速度状態を排他的な1文字で命名し、一連のサンプリング時刻毎の速度状態を文字列へ変換し、正規表現を用いて特定の状態遷移に対応する文字列を検索する方法が本研究の運動パターン検索原理である。今回は4象限、原点で同様の速度状態を設定し、計45の速度状態で検索した。同一データで検討の結果、本運動パターン評価は過去に行ったデータ点の座標位置による評価と異なる結果を与える可能性が判明し、本装置による技能評価を単一の評価法により行えないことが明らかとなった。これらの検討は日本歯科保存学会平成25年度春季大会に発表した。現在論文の作成を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
検証を目的としたファイル操作パターン(Watch-winding motion)の術者操作技能評価に関し、トルクをx軸、荷重をy軸とする2次元直交座標を用い、その座標位置および運動パターンによる2つの評価方法の策定が完了している。しかしながら両評価方法による評点の一致性を検討した結果、同一記録データに対し異なる評価を与える可能性が示唆されたことから、より正当な技能評価のためにさらに別視点の評価を加えて検討することが必要との結論に達した。現在そのための新たな評価方法の策定を行っている。 25年度に行った所属学会への成果発表に用いたデータ評価はサンプリングデータに事後の解析を加えたものであり、当該の評価については術者への即時のフィードバックは不可能であった。その後サンプリングソフトウエアに事後解析と同等の解析機能を付与しデータ取得後、直ちに位置、運動パターンについて評価およびフィードバックが可能となっている。
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今後の研究の推進方策 |
今回開発した運動パターン評価方法が特定の操作(Watch-winding motion)以外の操作方法にも検索方法として有効かどうかを検証することは本法の他分野への応用可能性を探る観点から重要な意義を有すると考えている。 また最近課題代表者が所属する研究機関に高精度3次元位置計測システム(Vicon Motion Systems)が導入された。同システムは複数の計測点を追尾計測可能であり、外部センサ出力をアナログデジタル変換により取り入れ、3次元位置計測と同期して計測する機能を有している。そこで本課題により製作したひずみゲージセンサを3次元位置計測システムへ接続することにより、力学的作用とファイル運動あるいは術者体表計測点との関連を検討可能となることが期待され、その準備を行っている。
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次年度の研究費の使用計画 |
26年度より高精度3次元位置計測システムの使用が可能となりその準備のため 当初実験計画を一部変更した。 高精度3次元位置計測システムのメインテナンスに係る部品、同システムへ接続する トルク荷重センサ開発に係る部品および計測装置の購入に用いる。
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