研究課題/領域番号 |
24592865
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山田 朋美 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (70452448)
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キーワード | 歯科ドリル / 骨導音 / 気導音 / 不快感 |
研究概要 |
本研究は歯科治療中の患者の不快感を効果的に軽減させる歯科騒音低減デバイスの開発をめざし、気導のみならず骨導に対するアプローチを試みているものである。 歯科タービン音における不快感の要因について、これまでほとんど測定されていない8kHzを超える高周波帯域の聴力レベルと歯科ドリル音の不快感への影響レベルを明らかとした。幅広い年代での聴力レベルの違いによる歯科タービン音に対する心理的な影響を調べるために、前年度からさらに被験者を加えて印象評価実験を実施した。歯科タービン音は、大阪大学歯学部附属病院においてヘッド部より30 cmの位置に設置したマイクロホンおよび騒音計を介して収録した後、音響編集ソフトにて周波数成分や音圧レベルの減衰などの編集を行って作成した。被験者は、簡易防音室でヘッドホンを介して呈示される歯科タービン音を聴取し、音の印象をSD法により評価した。10代、20代の被験者においては、同じ歯科タービン音を、40代以上の年齢の被験者より、騒々しく、甲高く、大きな、嫌な音として認知していた。高周波域の聴力の違いが歯科ドリルの印象に影響を与えており、聴力レベルにあわせた対策が必要である。 次いで、実際に口腔内で切削に伴い伝達される骨導音の測定を、計測モデルを作製して行った。骨内伝播波動の特性を解明していくために、被験者の歯を切削することなく一定条件での提示・測定が可能となる計測システムをくみたて、ボランティアの協力のもと、仮歯の切削時に伝達される骨導音および気導音の同時測定を行った。さらにタービン機種による骨導音特性の差異と共通点を把握するために、12機種のドリルから発生する気導および骨導音の測定を実施した。その結果、回転数に起因すると思われる基本周波数とその倍音が突出して骨導音として伝搬し、気導音と異なる特性を有することを明らかとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度から引き続き、被験者の8kHzを超える高周波聴力レベルの差異と気導音における歯科タービン音の不快感について検討し、8kHz以上の周波数成分が特に若年者において不快感に寄与することを示すことができた。また、骨導における骨内伝播波動の特性を解明していくために、気導音および骨導音同時計測モデルを構築し、実際の治療中の切削音についての計測を実施した。さらに、12機種のドリルを用いて、骨導音として伝搬する音の特徴を検討し、結果を得た。おおむね予定通り研究は進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
20名のボランティアを対象とし、防音室にて、計測で得られた骨導データを呈示音として知覚閾値および不快感関与する周波数帯域の測定を行い、伝搬する骨導音が実際にどのような音として認知されているかについての検討を行う。さらに、マスカー音を選定し、気導および骨導音に対してマスキング域を印象評価実験を用いて検討し歯科騒音低減デバイス作成へつなげていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
必要に応じて研究費を執行しており、被験者参加の心理実験に予定よりも時間がかかったことなどにより、当初の見込み額と執行額は異なった。 全体の研究計画に変更はなく、前年度の研究費も含め、当初予定通りの計画を進めていく。
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