研究課題/領域番号 |
24592868
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
藤井 理史 広島大学, 病院(歯), 講師 (10284217)
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研究分担者 |
鈴木 茂樹 広島大学, 大学院医歯薬保健学研究院, 助教 (30549762)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 覆髄材 |
研究概要 |
本研究では、Wntシグナリングの歯髄組織への効果を検討し、高い組織修復能を持つ覆髄材の開発を最終目的とした基礎研究を行う。受傷時には内在性Wntシグナリングの活性化が延長されることが知られている遺伝子改変マウス(Axin2欠損マウス)を用いた予備実験において、実験的露髄面周囲に骨・象牙質様組織が積極的に誘導される結果が得られている。本研究では、この遺伝子欠損マウスを用いた実験を進め、歯髄組織が如何にしてWntに反応し創傷治癒機転を促進させるのかを解明する。まず、Axin2欠損マウス臼歯における表現型の有無を検討するために、それぞれ健常な上顎第一臼歯の石灰化度や石灰化密度をμCTで検討した。その結果、象牙質の石灰化度及び石灰化密度に著明な差は認められなかった。Axin2欠損マウス及びコントロールマウスへの実験的露髄面の形成は、0.05cm径のカーバイドバーを用いた。まず、野性型マウスの上顎第一臼歯に画一的な露髄を行えるように手技の検討を行った。その結果、0.05cm 径のカーバイトバーでは露髄径が大きすぎて、歯髄の過度の損傷を認めることが多かったために、0.01cm、0.03cm径のカーバイトバーを使用して更に検討を進めた。その結果、0.01cm径のカーバイトバーを用いると、最も確実に画一的に露髄を行えることが明らかとなったために、0.01cm径のカーバイトバーを以後の実験に用いた。Axin2欠損マウス及びコントロールマウスの上顎第一臼歯に露髄面を作成し、14日後にサンプルを回収し、硬組織形成の有無を組織学的に検討した結果、Axin2欠損マウスでは、損傷部位に硬組織形成を伴う歯髄組織の治癒像が観察できたこと。一方、コントロールマウスの露髄面においては、周囲残存組織からの細胞浸潤を殆ど認めず、組織が露髄時の機械的損傷により、壊死している像が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度の達成目標は、①マウス・ラット実験プロトコールの申請、②マウス実験的露髄面の作成、③マウス組織切片の作成並びに解析の3点であった。目標を鑑みると、今年度は③の解析結果が十分でない。露髄面作成の条件検討に時間を要したのが主な原因であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
ヘマトキシリン・エオシン染色や免疫組織学的手法を用いて、更にタイムポイントを増やして解析を行う。特に、露髄後2、4日といった炎症初期反応の観察では特に炎症性細胞浸潤に対する評価を行う。好中球の遊走など炎症の評価はヘマトキシリン・エオシン染色で可能であり、更に炎症マーカーであるMAC2(別名:galectin-3)特異的免疫染色により検討する。露髄後7、10日では炎症期が過ぎ治癒機転が促進されると思われる。特に、Axin2欠損マウスでは促進された治癒機転が引き起こされると推定でき、歯髄未分化間葉系細胞や、前象牙芽細胞の硬組織形成細胞への分化が起こり、TypeIコラーゲンを主とする細胞外基質の分泌が開始されると想定される。この時期においては、硬組織形成分化細胞のマーカーである、Osterix, Runx2, Osteocalcinのin situハイブリダイゼーション並びに免疫染色を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
前年度はマウス組織切片の作成並びに解析において、露髄処置後14日目のサンプルしか評価を行えなかったために、次年度の研究費は組織学的観察を中心に、分子生物学試薬購入費用が主な支出として予定している。
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