研究課題/領域番号 |
24592869
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
稲垣 裕司 徳島大学, 大学病院, 助教 (50380019)
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研究分担者 |
永田 俊彦 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 教授 (10127847)
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キーワード | 最終糖化産物 / AGE / 歯髄細胞 / 糖尿病 / 炎症 / S100A8 / S100A9 |
研究概要 |
【目的】糖尿病ではしばしば動脈硬化を合併するが,近年,最終糖化産物(AGE)の蓄積が血管の石灰化に関与していることが明らかにされている。一方,動脈硬化巣では炎症の亢進に伴いカルシウム結合能を有するS100タンパクの発現の上昇が報告されている。そこで糖尿病ラットの歯髄組織におけるS100タンパクなどの炎症性マーカーの発現をin vivoで調べるとともに,培養歯髄細胞を用いて炎症性マーカー発現に及ぼすAGEの影響についてin vitroで検討した。 【材料と方法】2型糖尿病モデルラットと正常対照ラットを用いてin vivoの実験を行った。糖尿病発症を確認した後,上顎切歯の歯髄を採取してRNAを抽出した。炎症性マーカーとしてS100A8,S100A9およびIL-1βについてreal-time PCRを行いmRNA量について比較した。次にWistar系ラットを用いてin vitroの実験を行った。すなわち採取した歯髄細胞を50μg/ml アスコルビン酸,2mM β-グリセロリン酸および10% FBS含有EMEM培地にて培養し,Takeuchiらの方法に従い作製したAGEを50~1000μg/mlの濃度で添加して検討を行った。AGE添加開始後,48時間まで経時的にRNAを採取・抽出し,RT-PCR,real-time PCRを行い,炎症性マーカーの発現について調べた。 【結果】糖尿病ラットの歯髄では対照ラットと比較してS100A8,S100A9,IL-1βなどの炎症性マーカーのmRNA発現が高かった。また培養歯髄細胞にAGEを添加するとこれら炎症性マーカーの発現が有意に増強した。 【結論】糖尿病ラットの歯髄では炎症性マーカーの発現亢進が認められ,さらにAGEが培養歯髄細胞のこれら炎症性マーカーを上昇させることから,糖尿病歯髄の炎症反応亢進にAGEが関与している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,①初年度(24年度)の研究の続きとして「AGE添加によるラット歯髄細胞培養系の石灰化が歯髄細胞に特徴的なものであること」と,②「糖尿病歯髄では微細慢性炎症(Micro-inflammation)が生じ,その炎症反応がAGEによって亢進していること」を検証する計画であった。①については,「歯肉線維芽細胞と歯髄細胞の石灰化指標の変化を比較して石灰化が歯髄細胞に特徴的であること」を立証し,②については歯髄組織や歯髄細胞を用いて炎症関連マーカーの発現について検討し,「糖尿病ラットの歯髄では炎症性マーカーの発現亢進が認められ,さらにAGEが培養歯髄細胞のこれら炎症性マーカーを上昇させること」を証明した。①②について実験をほぼ完了し,期待していた結果が得られている。以上のことから,本研究はおおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
次年度(26年度)は、糖尿病歯髄における石灰化や炎症反応の亢進にAGE-RAGE-MAPKシグナル経路が関与していることを示すとともに、抗RAGE抗体や各種MAPK阻害剤を培地に加えることによってそれらの反応が抑制され、制御できることを示す。 実験にはWistar系ラット由来の歯髄細胞、AGEはTanikawaらの方法に従い作製したAGE-BSAを用いる。歯髄細胞はKasugaiらの方法に従いラットの上顎切歯より採取する。そしてアスコルビン酸、β-グリセロリン酸および10% FBS含有EMEM培地に、AGE-BSAの濃度を変化させて添加し、細胞培養を行う。対照としてnon-glycated-BSAを用いる。そして培地に抗RAGE抗体や各種MAPK阻害剤を濃度変化させて添加し,石灰化指標,骨基質タンパクや炎症性マーカーの動態を調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
申請時の計画で最終年度に検討する予定であった「糖尿病歯髄における石灰化や炎症反応の亢進にAGE-RAGE-MAPKシグナル経路が関与していること」を示すために,本年度前倒し請求を行い抗RAGE抗体や各種MAPK阻害剤を購入した。しかし現在も実験を継続しており,本年度,期間内に予想していた使用額に達することができなかった。 本年度に引き続いて,AGEを作製するための試薬,歯髄細胞を採取するためのラット,細胞培養のための培地や試薬を購入する。次年度は糖尿病歯髄における石灰化や炎症反応の亢進にAGE-RAGE-MAPKシグナル経路が関与していることを示すために,培地に添加する抗RAGE抗体や各種MAPK阻害剤を購入する。また歯髄組織切片や抽出した歯髄組織を用いて骨基質タンパクや炎症性マーカーのタンパク発現も確認するので,これらの一次抗体や免疫染色用のキット,ウェスタンブロッティング用キットも購入する。
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