研究実績の概要 |
【研究目的】動脈硬化巣などの病的石灰化部位ではAGEの蓄積によりS100A8/A9,IL-1βなどの炎症性マーカーの発現が亢進していることが報告されている。このことから歯髄組織でもAGEが石灰化のみならず炎症反応に影響を与えている可能性が考えられたため,平成25年度に糖尿病ラットの歯髄組織における炎症性マーカーの発現と,培養歯髄細胞の炎症性マーカー発現に及ぼすAGEの影響について検討した。その結果,糖尿病ラットの歯髄では健常ラットと比較して炎症性マーカーのmRNA発現が高く,さらに培養歯髄細胞にAGEを添加するとS100A8/A9やIL-1βなどの炎症性マーカーの発現が増強した。本年度は糖尿病歯髄の病的石灰化および炎症反応亢進のメカニズムを検証するために,抗RAGE抗体やMAPK阻害剤を用いてAGEの作用機序を調べた。 【材料および方法】歯髄細胞は雄性Wistar系ラットの上顎切歯より採取し,AGEを50~1000μg/mlの濃度で添加して細胞培養を行った。AGEはBSAとグリセルアルデヒドを用いて作製した。そして抗RAGE抗体やMAPK阻害剤(PD98059,SB203580, SP600125)を加え,経時的にRNAを採取・抽出し,石灰化関連マーカーと炎症性マーカーについてRT-PCR,real-time PCRを行った。 【結果】AGEを添加した培養歯髄細胞に抗RAGE抗体やMAPK阻害剤を添加すると,AGE添加により増加したOCNやS100A8/A9の発現は有意に低下した。このことからAGE添加による培養歯髄細胞の石灰化や炎症反応亢進にはRAGEおよびMAPK経路が関連していることが示された。 【結論】糖尿病の歯髄組織ではAGE誘導性に病的石灰化および炎症反応亢進が引き起こされており,これはRAGE-MAPK経路を介している可能性が示された。
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