研究課題/領域番号 |
24592870
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
高橋 加奈子 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80403715)
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研究分担者 |
湯本 浩通 徳島大学, 大学病院, 講師 (60284303)
平尾 功治 徳島大学, 大学病院, 助教 (00581399)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 歯髄炎 / 象牙芽細胞 / 免疫応答 / Alarmin |
研究概要 |
歯髄においてう蝕細菌の侵入を最初に認識するのは歯髄最表層部に位置する象牙芽細胞であり、象牙芽細胞層はう蝕細菌に対する第一の防波堤とも言える。上皮組織を欠いた歯髄において象牙芽細胞はその代替的な役割を担うことが予想され、歯髄の免疫応答開始において重要な役割を果たしていると考えられる。 本研究は歯髄炎の病態成立における生体防御機構において、象牙芽細胞を主役とした自然免疫機構におけるAlarminの役割をう蝕細菌や細菌性因子と宿主側(象牙芽細胞)との相互作用の見地より解析しようとするものである。ラット由来の株化細胞で象牙芽細胞の特性を有したKN-3細胞を使用し、Pattern Recognition Receptor (PRR)特異的リガンド(TLR-2; Pam3CSK4, TLR-4; E. coli LPS)あるいは炎症性サイトカイン(IL-1β, TNF-α, IFN-γ)にて一定時間刺激した。刺激を受けたKN-3細胞における培養上清中へのAlarmin(high-mobility-group Box;HMGB1)の産生・放出をWestern blot法にて解析した。その結果、各刺激物質により刺激後24時間で培養上清中にHMGB1の放出が認められた。また、このHMGB1の培養上清中への放出はカテキンの一種であるepigallocatechin-3-gallate(EGCG)の添加により抑制された。この培養上清中へのHMGB1の放出をELISA法にて定量したところ、HMGB1の放出は全ての刺激物質において認められたが、コントロールと比較して各刺激物質との間に有意差は認められなかった。しかしながらEGCGを添加することによってこれらのHMGB1放出は抑制された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
in vitroの実験系については当該研究の目的に沿って順調に進んでいると思われる。しかしながら交付申請書に記載した研究目的の一つである、正常あるいは炎症歯髄組織中の象牙芽細胞層におけるPattern Recognition ReceptorおよびAlarminの発現検索については未だ進行が遅れている状況にある。これは歯髄炎に罹患した抜去歯の試料採取が滞っていることによる。正常歯髄組織を有する抜去歯については、矯正治療のための智歯や小臼歯の抜歯により試料を得ているが、カリエスを有し歯髄炎となった歯の抜歯は稀であり試料の採取が困難となっているためである。
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今後の研究の推進方策 |
臨床的に不可逆性歯髄炎と診断された歯髄組織におけるPRRとAlarminの発現を薄切切片を作製し免疫組織化学的解析を行い解析する。特に象牙芽細胞層におけるそれらの局在に重点をおいて検索する。 KN-3細胞をPRR特異的リガンド(Pam3CSK4, E. coli LPS)あるいは炎症性サイトカイン(IL-1β, TNF-α, IFN-γ)で刺激し、その時のHMGB1以外のAlarmin発現を解析する。mRNA発現はRT-PCR法にて、蛋白発現はウエスタンブロット法にて、さらに培養上清中のAlarmin濃度をELISA法にて測定する。また、この条件下で抗菌物質(カテキン)を添加し、Alarmin産生に与える影響を検討する。 KN-3細胞をAlarminで刺激し、炎症性メディエーターの産生について検討する。またその産生に関与するシグナル伝達経路を各阻害剤を用いて解析する。さらに、この条件下においても抗菌物質(カテキン)を添加し、炎症性サイトカインやケモカイン産生に与える影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
昨年度の研究計画であった抜去歯試料の採取ができなかったため、薄切切片の作製および免疫組織化学的解析がいまだ遂行できておらず次年度研究費が生じている。したがってまずは歯髄組織におけるAlarminの免疫組織化学的な発現解析を行うために研究費を使用する予定としている。
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