研究実績の概要 |
現在患者の組織から採取した体細胞を生体外で多分化能を有するiPS細胞へ再分化させ、必要な細胞へ誘導した上で組織工学の技術を用いて生体外で3次元細胞培養し、それを生体内に戻し組織を再生するといった免疫拒絶のない「真の再生医療」の早期実現化が急務となってきた。そこで本研究は今後3~4年後の臨床実用化を目標に、新規のBiomaterialであるFish CollagenをiPS細胞移植システムのScaffold(坦体)として創製し、特に歯髄組織および象牙質の再生医療技術の開発・確立を目指すものである。 FCP(Fish Collagen Peptide)添加による歯髄細胞ならびに象牙芽細胞への分化誘導促進化を目指した結果、石灰化現象の指標であるALP, TypeⅠcollagen, Osteocalcin,BMP-2およびDentin sialoproteinのターゲット遺伝子を用いてリアルタイムPCR法によるcDNAの厳密な定量分析を実施し分化レベルを検証した。形態学的にカルセインにてラベリングした生細胞に対し共焦点レーザー顕微鏡観察を行い、象牙質様細胞外基質形成促進作用が確認し、ALP免疫染色、von kossa染色にて観察しFCPの生物学的石灰化促進能を証明することができた。 FC由来Scaffold(坦体)の作成および象牙芽細胞―担体複合体の形成に対しては、細胞の坦体への侵入効率と坦体内での増殖、分化の促進化が重要になってくる。細胞侵入効率を上げるために減圧下(-100mg)で播種を行い多孔質体の中心部まで侵入させ、従来法よりも短期間での生体内への培養細胞移植療法が実現可能となった。 さらに前臨床試験としての実験動物への細胞移植を行ったところ、形態学的にもCa親和性のカルセインを用い共焦点レーザー顕微鏡にて硬組織形成度を定量評価し、実際の臨床応用におけるタイミングの良い移植時期を推察できるようになった。
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