研究課題/領域番号 |
24592883
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
黒川 弘康 日本大学, 歯学部, 助教 (10291709)
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キーワード | 光干渉断層画像診断法 / 根面齲蝕 / 象牙質観察 |
研究概要 |
象牙質はエナメル質と比較して光透過性が低いことから,近赤外光の干渉原理を応用したOCTを用いて根面齲蝕病巣に生じた脱灰・再石灰化現象を詳細に解析するには,生体透過性に優れるとともに高い分解能を有する近赤外光の使用が有効と考えられる。そこでOCTの光源であるSLDの波長を変化させた場合のOCTイメージ像の変化を,信号強度分布より得られたピーク強度値の経時的変化と,ピーク波形の変化の指標となる1/e2 幅を用いて検討した。 ウシ抜去歯歯冠部歯質をエナメル質と象牙質で構成されたブロックとして切り出し,乳酸緩衝液中に28日間保管したものを測定試片とした。OCTイメージ像の観察には,SLD光源の波長を830nmおよび1310nmとして用い,歯質の表層から深層にわたる信号強度グラフを得ることでピーク強度値を算出した。さらに,最大ピークを有する非対称な波形のピーク強度値から1/e2幅を求め,OCTイメージ像の経時的変化と解析した数値との関連性について検討した。 その結果,歯質表層のピーク強度値は保管期間の延長に伴っていずれの波長においても増加するものの,その増加傾向は1310nmと比較して830nmで大きいものであった。一方,1/e2 幅の変化は830nmで少ない傾向を示した。1310nm と比較して分解能に優れる830nmの波長を用いた場合,光学的性質の微細な変化を捉えることが可能であり,結果として歯質表層での散乱光の検出が増加することで,深部でのシグナル検出頻度が低下したものと考えられた。一方,1310nm の分解能は830nmと比較して低いところから,光線の深部到達性が影響を受けることなく,1/e2 幅の変化を捉えることが可能であったと考えられた。 以上の結果から,OCTの照射光の波長を選択することで,象牙質の微細な状態変化をより詳細に捉えることが可能であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行するために必要なOCTの測定手技は確立されている。さらに,得られたデータを申請者の所属する主任教授に随時報告し,研究計画,内容に対するフィードバックを受けるとともに,測定条件等に問題が生じた場合,OCT開発者と協議,対応することで,おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
H25年度の実験によって得られたOCT照射レーザ波長の特性を応用し,エナメル質と比較して観察が困難な象牙質の表層および深部での脱灰および再石灰化程度を,ウシ抜去歯に作製した象牙質齲蝕モデルを用いてOCTイメージ像と1/e2幅から詳細に検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
レーザ顕微鏡関連消耗品の購入が間に合わなかったため。 ウシ抜去歯歯根部象牙質を脱灰および再石灰化させた場合の状態変化を観察するため,ウシ歯,歯質脱灰・再石灰化用試薬およびOCTおよびレーザ顕微鏡関連消耗品の購入に対して使用する。
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