研究課題/領域番号 |
24592888
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研究機関 | 神奈川歯科大学 |
研究代表者 |
椎谷 亨 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (40350532)
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研究分担者 |
向井 義晴 神奈川歯科大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (40247317)
寺中 敏夫 神奈川歯科大学, 歯学部, 名誉教授 (60104460)
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キーワード | 過再石灰化 / 口腔内モデル / TMR分析 / 象牙質脱灰 / in situ / 根面う蝕 |
研究概要 |
被験者6名に対して、私達研究グループの考案した義歯形状新規口腔内装置を使用したが、前年度の反省を生かして改良を加えた。すなわち、被験者によって象牙質表層下脱灰病巣のでき方にかなり差があり、病巣体部脱灰の強すぎるケースも認められたため、口腔内装置の頬側レジンフレンジ部の象牙質試料を覆っていた実験用サンプルパックを、より保水、貯留能力を持つガーゼに変更し、唾液成分の影響が強まるよう配慮した。 象牙質試料をウシ下顎中切歯の歯根部から作製し、超音波洗浄、ガンマ線滅菌を施した後、1×3mmの窓開けをネイルバーニッシュにて行い、窓開け面の半分をS-PRGフィラー含有歯面コーティング材(松風社製)で被覆した象牙質試料、およびコントロールとしてS-PRGフィラーを含まない歯面コーティング材(松風社製)で被覆した象牙質試料を同数用意した。前者試料は各被験者の右側口腔内装置、後者試料は左側装置の頬側フレンジ凹部に3つずつ挿入し、シリコン印象材を用いて取り付けた。口腔内装置は1日3回の食事時に10%シュクロース水溶液に浸漬し、その時間以外は必ず口腔内に装着した。このスケジュールを20日間繰り返した。その後、得られた象牙質試料から厚さ300μmの薄切片を作製し、通法に従いTMR分析を行った。 この研究の意義は、口腔内モデルを利用して、過再石灰化環境を目指すことにある。より実際の口腔内に近い環境下で高齢者根面う蝕に対する過再石灰化治療システムを考えることは非常に重要である。 今回の結果、昨年度実験方法ではほとんど脱灰病巣のできなかった被験者の象牙質試料にも適切な大きさの脱灰病巣が生じていた。ガーゼの種類を変えた効果が表れたものと思われる。その一方で被験者による脱灰病巣のでき方には大きく違いが見られた。この実験は未完了であり、nの数も不足しているため、継続して当実験を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
口腔内装置を用いた今回のin situ実験は、右側にS-PRGフィラー含有歯面コーティング材塗布群、左側にS-PRGフィラーを含んでいない歯面コーティング材塗布群として進めてきたが、今年度は左右の群を入れ替え引き続き実験を継続する予定である。比較的脱灰の浸襲の弱い状況では、被験材料であるS-PRGフィラー含有歯面コーティング材料は象牙質脱灰抑制に有効に働く可能性が示唆されるものの、現段階では当然nの数が少ないため、まだ断定するには至っていない。継続する今年度の実験でどのようなデータが出てくるか、ということに達成度のすべてがかかわってくるのが真実であるが、現段階ではデータがばらついており、やや遅れている、という自己点検評価が妥当だと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
被験者6名による昨年度のin situ実験を今年度も継続する。すなわち昨年度とは左右の群を入れ替え、左側をS-PRGフィラー含有歯面コーティング材塗布群、右側をS-PRGフィラーを含んでいない歯面コーティング材塗布群とする。 研究を遂行する上で、被験者によるデータのばらつきが問題であると考えているが、各被験者の口腔内環境の違いがその一番の要因となっているものと思われるため、カリエスリスクテスト(CRT bacteria, CRT buffer(ivoclar vivadent社製)を使用する)も行い、最終的なデータ分析に利用する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額(B-A)が223,439円となった。当該年度内での消耗品購入に使用する考えもあったが、翌年度分は直接経費が当該年度よりもともと少ない800,000円であったため、基金という性格の科研費であることを考慮させていただき、翌年度分に加えさせていただくこととした。今年度は研究分担者とともにIADRヨーロッパ部会(クロアチア)での海外学会発表を考えており、その費用(旅費)がかなりかかることが予想されるため、それを意識させていただいた次第である。 次年度使用額(B-A)223,439円分は、研究分担者も同行するIADRヨーロッパ部会(クロアチア)での海外学会発表において、旅費として使用する計画である。 また、それ以外に関しても当該年度と同様の物品費(消耗品代)、英語論文作成のための英文校正代や投稿費用、国内外学会発表などでの旅費支出、参加登録費等に使用する計画である。
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