この研究の目的のひとつである、in vitroでのアルギン酸ゲル内骨髄細胞播種による硬組織形成、そして、多孔質ハイドロキシアパタイト担体での骨髄細胞による骨形成に及ぼすアルギン酸ゲル含有の効果を確認した。6ウェル-マイクロプレートでのアルギン酸ゲル薄膜に播種したラット大腿骨骨髄由来細胞の培養で、デキサメタゾンの添加によってゲル内にnodule形成を認め、Noduleの形成量はオステオカルシンの定量によってアルギン酸ゲルを用いないプレートで骨髄細胞を培養した場合よりも有意に多いことが明らかになった。 また、2%あるいは4%濃度のアルギン酸ゲル、そして2%あるいは4%濃度のアルギン酸ゲルにα-リン酸三カルシウムを10%加えたのちに塩化カルシウムで架橋したアルギン酸ゲルを凍結乾燥して多孔質担体を作製し、これにラット大腿骨骨髄細胞の懸濁液を浸潤させてデキサメタゾン添加培養液中で培養した。なお、α-リン酸三カルシウムは担体の強度の向上のために添加した。これらのアルギン酸ゲル由来多孔質担体の中で、10%α-リン酸三カルシウムを含む4%アルギン酸ゲルから調製された担体ではオステオカルシン量が有意に高いレベルを示した。この結果は、α-リン酸三カルシウムが細胞接着に優れた特性を有する可能性を示唆している。10%α-リン酸三カルシウムを含む4%アルギン酸ゲルに由来する多孔性スポンジ様担体が骨髄細胞を用いた骨形成に適する結果が得られた。 多孔質ハイドロキシアパタイトとともにアルギン酸ゲルから作製したスポンジ状多孔質担体は歯の再生の実現に向けての応用に適した素材であり、骨髄由来幹細胞の骨芽細胞への分化を促進するために適した担体であることが証明された。
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