研究課題/領域番号 |
24592890
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
阿南 壽 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (80158732)
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研究分担者 |
諸冨 孝彦 九州歯科大学, 歯学部, 准教授 (10347677)
泉 利雄 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (40248547)
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キーワード | 根尖性歯周炎 / 再生医療 / PSリポソーム / マクロファージ / BMP-2 / ハイドロキシアパタイト / 生体活性ガラス |
研究概要 |
ラットの下顎第一臼歯遠心根を抜髄、開放することにより、自然感染による根尖病変の成立を計った。術後7日目に、根管内にPSリポソーム(PS)または生理食塩液(SALINE)を貼薬した。その後、3日および7日目に、根尖病変部におけるサイトカイン(IL-1βおよびTGF-β1)の発現、骨吸収因子であるRANKLおよびTRAPの発現、骨形成因子であるBMP-2およびALPの発現ならびにマクロファージ、破骨細胞および骨芽細胞の動態について組織化学的に解析した。PS群では、SALINE群に比較して、ED1陽性を示すマクロファージの浸潤が多く観察された。PSおよびSALINEの両群において、サイトカイン(IL-1βおよびTGF-β1)の発現は乏しかった。また、RANKLおよびTRAPの発現、破骨細胞数は、両群において少数ではあったが、ややSALINE群の方が多く観察された。一方、骨形成因子であるBMP-2およびALPの発現において、PS群はSALINE群に比較して、優位に多く観察された。また、PS群の根尖病変はSALINE群に比較して縮小し、骨面では骨芽細胞が層状に配列すると伴に、新生骨の活発なリモデリング像が観察された。 以上のことより、PS群ではSALINE群に比較して、BMP-2およびALPの発現が亢進されることにより、破壊された根尖部歯周組織の治癒が促進された可能性が推察された。また、PSリポソームは炎症性骨吸収を制御すると同時に骨組織の再生を促進する可能性が示唆された。一方、ラット頭蓋冠骨欠損部に骨補填材とPSリポソームを併用することにより、骨欠損部の変化についてμ-CTを用いて経時的に解析を行っている。対照とするハイドロキシアパタイト(HAP)とPS埋入群では、HAPの周囲に新生骨組織様の不透過像が観察された。現在、生体活性ガラスとPS埋入群の試料採取を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在、ラット根尖病変の実験系を確立するとともに、Nishikawaらの方法(J Biochem Chem 1990; 265, 5226-5231)を基にしたPSリポソームの作製も習熟している。 根管内にPSリポソームを填入、留置することにより、根尖病変中におけるマクロファージならびに骨芽細胞および病変部の骨組織のリモデリングについて、アルカリフォスファタ ーゼ活性の発現状態やBMP-2発現細胞の局在について解析を行った。また当初、作製したPSリポソームの効果は、冷室保存で数週間は維持されると考えられたが、現在ではより効果的に使用するために、作製後3日以内に使用することで研究を進めている。さらに、頭蓋冠骨欠損動物モデルの作製法を確立し、対照とするHAPとPSリポソーム埋入群のμ-CT撮影およびRNAサンプルの採取を終了している。また、BAGをPSリポソームとともに填塞することにより、経時的に標本を採取し、試料作製を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
1) 平成25年度と同様の方法で骨欠損動物モデルを作製する。 2) 根尖部歯周組織再生の環境整備、スペースメーキングを目的として、PSリポソームを骨創腔内に貼付後、異なる粒子径のBAGを留置することにより、再生促進因子併用療法の歯周組織誘導・再生効果について、平成25年度と同様の解析を行う。 3)BAGの性状の違いが骨組織形成に及ぼす影響について検索することを目的として、再加熱処理を施して多孔体としたBAGを使用し、HAPとの比較研究を行う。 ①免疫組織学的検索 免疫細胞の動態とサイトカイン・増殖因子・アポトーシス細胞の発現について特異抗体を用いて、免疫組織化学的解析を行う。②酵素組織化学的検索 破骨細胞のmarker emzymeである酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)染色、骨芽細胞系細胞のmarker emzymeであるアルカリファスファターゼ(ALP)染色を行なう。③各実験群のμ-CT解析を行うとともに採取したRNAの分子生物学的解析を行う。
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