研究課題/領域番号 |
24592904
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
鈴木 哲也 東京医科歯科大学, 歯学部, 教授 (60179231)
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研究分担者 |
大木 明子 東京医科歯科大学, 歯学部, 准教授 (10345225)
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キーワード | 嚥下機能 / 舌接触補助床 / 舌圧 / 高齢者 |
研究概要 |
舌の運動機能が低下したことにより摂食・嚥下障害に至った患者さんに対して、舌接触補助床(PAP)を用いた歯科補綴学的アプローチが注目されている。しかしPAPの設計指針については明らかにはなっていない。本研究では正常被験者に対して実験用スプリント(以下、スプリント)を装着させ咬合高径を臼歯部で5mmさせることで、舌の口蓋への接触を阻害し、実験的に嚥下機能を低下させた。これに対して、均一な厚みの口蓋床(以下、口蓋床)およびティッシュコンディショナーを使って機能的に形態を決定した実験的PAP(以下、PAP)を装着させ、嚥下機能が回復されるかを調べた。実験条件は①何も装着しない時をコントロールとして、②スプリント装着、③スプリント+咬合床装着、④スプリント+PAP装着の4条件とした。水(10ml)およびゼリー(10g)の摂取時の口蓋への舌接触圧を舌圧測定システム(スワロースキャン、ニッタ)を用いて測定した。 いずれの被験者においてもスプリント装着により舌圧持続時間の増加と最大舌圧の低下がみられ、嚥下機能の低下が確認された。これに対して、被験者Aでは水、ゼリー嚥下時ともに、スプリント+咬合床装着ではあまり変化はなかったが、PAPを装着すると最大舌圧の増加、舌接触時間の短縮が認められた。被験者Bでは水嚥下では被験者Aと同様な傾向がみられたが、水よりも嚥下しやすいと言われているゼリーでは、口蓋床の装着においても最大舌圧の増加が認められた。また、被験者CではPAPの効果がみられ認められなかった。以上のように舌圧の測定値には個人差が大きかったが、その原因としての違いが考えられた。今後は被験者数を増やし、口蓋の深さ,形態、実験的PAPによる形態の変化を舌圧の変化と絡めて分析する必要があると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
製造メーカー(ニッタ)が舌圧測定システム(スワロースキャン)の販売とサポートが中止となった。ところが、使用中の測定装置の不具合が発生し測定がかなりの期間中断した。しかし舌圧測定装置の開発研究を行った大阪大学に代用部品があることがわかり、譲渡いただくことで実験再開がかなったが、その期間が無駄になった。
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今後の研究の推進方策 |
舌圧の個人差が大きいことが結果の分析を難しくしていると思われる。被験者を増やすことがまず一番に大切だが、舌圧をこれまでの舌圧測定システムだけでなく、広島大学方式の簡易舌圧測定器も併用し被験者のスクリーニングを検討する。また、最終的なPAP製作の指針を示すためには、実験用PAPの形態を舌圧と絡めて詳細に分析する必要がある。このため3次元スキャーナーを用いて口蓋の形態、実験用PAPの形態を取り込み、分析を進めることとする。また、当初前年度に計画していた被検食品の物性測定がまだであったため、それを実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
舌圧測定センサーシートを追加購入する予定だったが、メーカーの生産停止および使用数が予定を下回ったため購入しなかったため。 被験者数を増やすため実験的PAPの製作費が追加となる。また、被験者ごとに機能的決定した実験的PAPの形態計測にはスタンドアローンの専用PCが必要となる。また、被検食品の物性測定を実施するためのカラム等の購入費用が必要となる。研究最終年度のため研究成果発表のための旅費および英文校正費を使用する。
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