研究課題/領域番号 |
24592908
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
堀 一浩 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (70379080)
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研究分担者 |
井上 誠 新潟大学, 医歯学系, 教授 (00303131)
小野 高裕 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (30204241)
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キーワード | 嚥下 / 嚥下障害 / 舌圧 / 咽頭残留 / 口腔内残留 / 誤嚥 |
研究概要 |
嚥下後誤嚥は,梨状窩や喉頭蓋谷など咽頭内に残留したものや口腔内に残留した食塊が喉頭内に侵入し,誤嚥に至るものである.しかし,これまで多くの研究において,咽頭内に残留する食塊の定量的評価を行う試みが行われているものの,未だ確立された方法はない.そこで我々は,呼気に含まれる香料の濃度を鼻孔や口腔から測定することにより,口腔咽頭残留量を評価する方法を考案した.本法の特徴は定量的かつ経時的ににおい強度を測定できる装置を用いることにより,非侵襲的かつ定量的に口腔・咽頭残留を測定できることである.装置は新コスモス電機社製ニオイセンサーXP-329IIIRを使用し,口腔・鼻腔からの呼気に含まれるにおい成分量を経時的に測定した.試料としてグレープ香料を使用した. まず,食塊や生体側の要素がレトロネーザルに与える因子について検討を行った.その結果,嚥下直後ににおい強度は上昇したのち徐々に減少し,嚥下5分後には基線近くの値となった.また,におい強度は呼吸に大きく影響を受けていた.試料量の違いは,香気量に影響を与えなかったが,試料量が多いほど最大香気量に達するまでの時間が延長した.また,嚥下圧と同時測定したところ,嚥下圧と香気量には相関が認められ,食品のフレーバーリリースだけでなく嚥下時の咽頭圧が香気量に影響を及ぼしていることが示唆された. 次に,香気量による咽頭腔内残留の推定を行った.被験者の口腔咽頭内にそれぞれ0.2,0.4,0.6mlの試料を注入し,120秒間保持させ,その後嚥下するように指示をした.試料注入後(すなわち口腔咽頭内に一定量の試料が残留している状態),すみやかににおい強度は上昇し,維持された.また,嚥下後にはその値は減少し,嚥下5分後には基線近くの値となった.また,試料が口腔咽頭内に残留している間のにおい強度と口腔咽頭残留量には,高い正の相関関係が見られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は,香料嚥下後のレトロネーザルの動態を検証するとともにともに,口腔・咽頭残留の定量的評価法の検証を行った. その結果,香料嚥下後にはレトロネーザルは速やかに上昇し,徐々に減少した.その強度は呼吸運動に影響を受けており,呼吸運動をモニターすることでその影響を排除することが可能となった.さらに,摂取量の違いによる検討を行い5ml嚥下時に個人間変動が最も少なく,今後の実験における条件を決定することができた.また,嚥下後のにおい強度の最大値は嚥下時に咽頭圧に相関していた. 試料注入後(すなわち口腔・咽頭内に一定量の試料が残留している状態),すみやかににおい強度は上昇した.また,嚥下後(被験者は健常者なので口腔・咽頭内残留量はゼロになったと推定できる)にはその値は減少し,嚥下5分後には基線近くの値となった.また,試料が口腔・咽頭内に残留している間のにおい強度と口腔・咽頭残留量には,高い正の相関関係が見られた.これらより,本法が残留量を定量的に評価できることが示唆された. おおむね研究計画通りにすすんでおり,得られた結果も想定通りのものであったことから,おおむね順調に進行しているものと考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の結果から,嚥下時におけるにおい強度の動態,および口腔咽頭残留シミュレーション時の匂い強度の動態を明らかとした.これらは,次年度の実験における条件データとなるものであった. 次年度は,嚥下運動により一過性ににおい強度が増加することがわかったことから,嚥下運動後の口腔咽頭残留シミュレーションを行い,そのにおい値を検討する予定としている.また,嚥下運動によるにおい値上昇を補正する方法を検討するとともに,におい強度の増加に関連する因子を検討する.さらに,残留量をもっと短時間で測定する手法について検討する予定としている.また,これまでの研究結果を総括し,結果報告・論文執筆を行っていく予定としている.
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、順調に研究を行うことができたが、測定装置は当研究室で保有している物を使用したため,新たに設備を購入する必要は無かった. 必要な消耗品の他,設備のメンテナンス,成果発表のための海外・国内旅費,論文作成補助などに使用する予定である.
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