平成26年度は25年度にインプラントに垂直に荷重が加わった条件で比較した下顎の乾燥骨から得たコーンビームCT(以下CBCT)画像データを基に作成した3次元有限要素モデル(以下CBCTモデル)とμCT画像を基に得られた精密な3次元有限要素モデル(μCTモデル)を側方荷重下でのインプラント周囲骨応力を比較した。モデル間で皮質骨・海綿骨それぞれは同様な応力値と応力分布を示した。それらの結果と前年度に得た垂直荷重下での結果によって、荷重方向にかかわらず、CBCT モデルは力学的視点において、精密なμ CT モデルと類似した性質を有することを検証した。また、同様な方法において臨床応用可能な3次元有限要素(3D-FEM)骨梁応力解析モデルについても作成および解析を試みた。患者の同意のもと、歯科用CBCT装置(AUGE SOLIO,アサヒレントゲン)により撮影したインプラント治療前の下顎臼歯部の欠損部の画像データを用いた。また、μCT装置(ELESCAN日鉄エレックス)を用いてアバットメントを装着したネジ型のインプラント単体を撮影した。その後、ボリューム画像位置合わせオプションを付加したRATOC社製3D骨梁構造計測ソフト(TRI/3D-BON)を用いてCBCTデータから得た3D-FEM骨梁モデルに別当で撮影したインプラントのデータを重ね合わせてインプラント埋入後の状態をシミュレーションした3D-FEMモデルを構築した。完成したモデルに対し、RATOC社製有限要素法ソフトTRI/3D-FEM を用い、インプラント上部にあるアバットメントに垂直に200Nの荷重を加え、応力解析を行った。その解析結果、インプラント周囲の皮質骨と海綿骨の応力分布は骨梁レベルまで明かとなった。したがって、本モデルの作成方法・分析方法が術前の段階で術後のインプラント周囲骨応力の予測を可能にするための基盤となり、応力・ひずみを最小化する治療計画を選択するシステムへ臨床的な発展ができると考える。
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