研究課題/領域番号 |
24592914
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
長岡 紀幸 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (70304326)
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研究分担者 |
松本 卓也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (40324793)
入江 正郎 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90105594)
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キーワード | ジルコニア / カップリング / リン酸エステル / 固体NMR / 抗菌剤 |
研究概要 |
ジルコニア表面のリン酸エステルによるカップリング処理において,化学結合状態を固体NMR法で評価した。リン酸エステルでカップリング処理したジルコニア,リン酸エステルで処理する前のジルコニア,ジルコニアと反応する前のリン酸エステルの状態を観察した。ジルコニアにカップリングしたリン酸エステルにはP-O-Hの結合が残っており,リンの化学シフトが観察された。この結果から,リン酸エステルのリン酸基が1価のイオンとなり,ジルコニアのジルコニウムイオンとイオン結合していることが示唆された。また,ジルコニアとリン酸エステルとは,イオン結合に加えて水素結合も関与していることが示唆された。 補綴装置の接着において,劣化による脱離の問題は避けられない。歯質接着部での剥離は,2次カリエスの発生が散見される。抗菌性の歯質接着剤を使用すれば,2次カリエスを抑えられる可能性がある。2次カリエスの発生を防ぐ歯質接着剤の開発を目指して,抗菌物質を保持させたフィラーを接着剤に添加することを試みた。フィラーは層状粘土鉱物であるモンモリロナイトを用い,層間に塩化セチルピリジニウム(CPC)のセチルピリジニウムカチオンをインターカレートしたものを用いた。セチルピリジニウムカチオンがインターカレートされたモンモリロナイトからは,セチルピリジニウムカチオンの放出が認められ,S.mutansに対して抗菌性を発揮することが示唆された。モンモリロナイトを樹脂に添加すると,機械的性質の向上,水のバリア性付与などの機能性向上が報告されている。モンモリロナイトは生体に対しても安全な鉱物であると思われることから,歯質接着剤への添加で,高機能化できると考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ジルコニア表面のリン酸エステルによるカップリング処理において,化学結合状態を固体NMR法で評価した。リン酸エステルのリン酸基が1価のイオンとなり,ジルコニアのジルコニウムイオンとイオン結合していることが示唆された。この結果は,第62回日本歯科理工学会学術講演会で報告し,発表優秀賞を受賞した。 ジルコニアを歯質に接着することにおいては,ジルコニア表面の接着に加えて,歯質との接着が重要である。歯質接着界面を直交配置型FIB-SEMを用いて3次元観察した。この結果は,文部科学省ナノテクノロジープラットフォームの支援により,物質材料研究機構との共同研究によるものであり,第32回日本接着歯学会学術大会で報告し,発表優秀賞を受賞した。 以上のように,当初計画通りに研究が進展していると共に,学会発表では高く評価されている。
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今後の研究の推進方策 |
ジルコニアへのリン酸エステルの化学結合に関して,さらに検討を重ねる。 補綴装置の試適を想定し,唾液汚染の効果的な除去法,カップリング処理法を最適化する。臨床応用できる技術提供をめざす。 最終年度のため,これまでの研究結果を統括し,ジルコニアとカップリング剤との化学結合状態などを評価する。臨床応用でき,簡便かつ最適なジルコニア表面処理法を提案する。
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