研究課題/領域番号 |
24592916
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
下江 宰司 広島大学, その他の研究科, 講師 (90379884)
|
研究分担者 |
平田 伊佐雄 広島大学, その他の研究科, 助教 (40346507)
里田 隆博 広島大学, その他の研究科, 教授 (80170801)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
キーワード | ジルコニア / 接着 / 歯冠用コンポジットレジン |
研究概要 |
先ず,ナノジルコニアにおけるアルミナブラストの条件が接着強さに与える影響について検討した.これは粒径25 μm,50 μm,90 μm,125 μmの酸化アルミナで処理した後,プライマー処理を行い,熱サイクル前後の接着強さを計測した.各粒径によるアルミナブラストにより表面粗さにおいて有意差が認められ,粒径が大きいほど大きくなった.しかしながら接着強さにおいては,処理なしとは差があったものの,アルミナの粒径による差は認められず,先のT-TZPを用いて行なったものと同様の結果が得られた.次に,歯冠用コンポジットレジンとの接着の指標とするため,ナノジルコニアと床用レジンの接着における表面処理の影響について検討した.表面処理は,アロイプライマー,スーパーボンド,ロカテックシステムとそれらのコンビネーションでそれぞれ処理し,流し込み用義歯床用レジンとの接着強さを計測した.その結果,熱サイクル後ではアロイプライマーとスーパーボンドの併用が最も高い値を示した.また,熱サイクルによる値の減少が大きかったことから,被着体の熱膨張率も接着強さの耐久性に影響を与えることが示唆された. また,ジルコニアとの接着には非貴金属用接着プライマーが有効とされているが,実際にY-TZPとナノジルコニアの2種のジルコニア表面に有効とされる機能性モノマーが吸着しているかを,X線光電子分光分析装置(XPS)を使用して表面分析を行い,その化学的相互作用について検討した.その結果,VTDやシランカップリング剤はジルコニアに吸着せず,MDPと4METAは吸着吸着するが,4METAのほうが吸着量が少ないことが明らかとなった.このことにより,ジルコニアの接着における機能性モノマーの効果について,化学的な根拠を証明することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,セリア系ナノ複合体Ce-TZP/Al2O3であるナノジルコニアで確認されていないブラスト処理による機械的嵌合力の影響や,接着表面処理の併用による接着強さへの影響について検討した.また,次年度に予定していたY-TZPとナノジルコニアの2種のジルコニアにおける機能性モノマーの化学的相互作用については予定を前倒しで行なった. 計画であれば今年度にぬれ性の影響についても検討する予定であったが,レーザーによる新しい機械的維持について考案したため,計画を変更してその効果について検討することとし,試験に向けた試料の加工について打ち合わせ行い,試作を外注し製作した. 上記のことから多少の計画の前後はあるものの,概ね順調に進展していると考える.
|
今後の研究の推進方策 |
先ず,新しく考案したレーザーによるマイクロスリットの機械的嵌合力について実験を行なう.本研究の最終的な目的はジルコニアと歯冠用コンポジットの結合力を,劣化が少ない陶材の結合力より高め,臨床応用を可能とすることであるため,歯冠用コンポジットと陶材の両方について比較,検討する. 次いで,現在まだ明らかにされていない,ナノジルコニアと歯冠用コンポジットの接着における相変態の影響について検討する.Y-TZPではわれわれが以前報告したように,アルミナブラストの応力によりジルコニア表面が正方晶から単斜晶に相変態するが,陶材焼付けのように熱処理をして正方晶に戻さないほうが歯冠用コンポジットとの接着強さは大きくなった.また,ナノジルコニアの表面処理の影響が接着強さに与える影響についても,非貴金属用接着プライマーやロカテックシステムを軸に検討を行なう.これもY-TZPでは前回の申請で報告済みであるがナノジルコニアでは未調査で,他の研究者の報告では合着材によるものがほとんどである. これらを行なった上で,上記の機械的維持,表面結晶の相変態,接着表面処理がぬれ性に与える影響を調査し,現在臨床で行なわれている以外の方法でもぬれ性を向上させ,接着強さを改善できるものがあるか検討を行なう予定である.
|
次年度の研究費の使用計画 |
物品として,本学に設備がないためレーザーによるマイクロスリットを付与した試料を一定数外注する.また,各種実験に用いている直径10 ㎜,厚さ2.5 ㎜のジルコニア試料(Y-TZPおよびナノジルコニア)もメーカーに依頼する.さらに,これまで使用した試料で,可能なものは再利用するが,手作業で表面を研削するのは膨大な時間がかかり,精度も信頼できないことからできるだけ安価な一部自動研削システムを導入予定である. 旅費では研究成果の学会発表をいくつか予定しているが,まず7月に韓国で開催の第5回国際歯科技工学会で発表予定である.この他,随時成果を学会誌に投稿するための経費も計上している.
|