舌の機能は加齢と共に低下し、嚥下機能が低下することによって、誤嚥性肺炎のリスクが大きくなる。そこで、咀嚼、嚥下機能を考慮した義歯形態の指標を得ることを目的として、咬合高径と臼歯人工歯の頬舌的排列位置が食塊形成能と嚥下動態に与える影響を調査し、患者の舌機能に調和した咬合高径、口蓋形態について検討することとした。 平成24、25年度には、口腔期と咽頭期の嚥下動態を一連のものとして摂食嚥下機能を総合的に評価するための新しいシステムを構築した。若年有歯顎者において、咬合高径を挙上した実験用口蓋床と臼歯口蓋側部の厚みを変えた口蓋床を作製し、嚥下内視鏡を用いて、各口蓋床装着時および未装着時の食塊形成能を評価した。また、嚥下評価システムを用いて、各実験用口蓋床装着時および未装着時の嚥下を評価した。以上より、咬合高径と口蓋形態が若年者の舌接触圧、食塊形成能、嚥下機能に与える影響を総合的に評価した。ただし、嚥下内視鏡を用いることに対する恐怖心から、被験者の獲得が困難であった。 平成26年度は、被験者となる全部床義歯装着者を確保する上で、嚥下内視鏡を用いることに同意を得ることが非常に困難であったため、食塊形成の評価はクリープメーターを用いたテクスチャープロファイル分析によって行うよう実験計画を変更した。この変更に伴い、若年有歯顎者においてもテクスチャープロファイル分析を追加した。若年者においては、咀嚼、嚥下機能の予備力が大きいため、咬合高径や口蓋形態が咀嚼、嚥下機能に与える影響は少なかった。一方、無歯顎被験者では実験用上下全部床義歯を新たに作製することを条件に、現在までに4名の無歯顎被験者の同意を得て、義歯を作製している。 今後は、無歯顎被験者を対象に、咬合高径と口蓋形態が全部床義歯装着者の最大舌接触圧、食塊形成能、嚥下機能に与える影響を総合的に評価する予定である(目標被験者数10名)。
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