研究課題
高齢義歯装着者における咀嚼ならびに嚥下の機能状態に食事・栄養状態がどのように関連するかについての検討を行った。被験者は本院受診の10名の70歳以上の高齢義歯装着者であった。咀嚼機能は客観的評価として,グミゼリー咀嚼による溶出糖量ならびに咬合力計測と色変わりガムによる混合能力計測を行い,嚥下機能は客観的評価として反復唾液嚥下テスト,スワローイングキャパシティテスト,押しつけ最大舌圧を行った。また,食事分析と栄養評価については,献立・食事状況記録表を用いた記録と食事内容の写真撮影を被験者自信に依頼して行った。その結果,嚥下機能が明らかに低下した被験者は認められず,グミゼリー咀嚼による溶出糖量と咬合力計測からの咀嚼機能は,反復唾液嚥下テストならびにスワローイングキャパシティテストの嚥下機能との有意な相関関係は無かった。しかし,咬合力計と押しつけ舌圧との間には相関関係が認められた。また,嚥下機能がわずかに低下した被験者は1名であった。したがって,当初に予想した咀嚼機能と嚥下機能の対応関係パターン(咀嚼機能良好-嚥下機能良好,咀嚼機能良好-嚥下機能不良,咀嚼機能不良-嚥下機能良好,咀嚼機能不良-嚥下機能不良)には分類されなかった。栄養状態と咀嚼と嚥下の両機能の相関関係については,カロリー量と蛋白質量に有意な相関は認めなかった。咀嚼と嚥下について相関を示した関連パラメーターが咬合力と押しつけ最大舌圧であったのは,ともにパフォーマンスである筋力を示すパラメータであることが関係していると考えられる。今後,機能低下が著しいと考えられる生活自立度の低い被験者において,食生活習慣を加味した栄養評価方法を検討していく必要があると考えられた。
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