味覚障害のスクリーニング法として炭酸脱水酵素VI型ポリクローナル抗体を用いたイムノクロマト試薬による体外診断薬の開発を目的とし、唾液に対する反応性試験、イムノクロマト試薬測定値と血清亜鉛値との相関について検討してきた。本年度ではより特異性の高いモノクローナル抗体のイムノクロマト試薬に組み込む方法を試みた。 「方法」1.耳下腺唾液採取:健常成人の耳下腺唾液を吸引採取し、サンプルに供した。被験者に対しては十分な説明を行い、インフォームドコンセントを得て、個人が特定できないよう配慮し研究を実地した。2.金コロイド標識抗体:計5種類の抗体を用い作製した。3.イムノクロマト値測定:金コロイド粒子は40 nm、メンブレンはHi-Flow 135、テストライン用抗体はヒトCA VIの合成ペプチドに対して作製した抗体、コントロール用抗体はGoat anti-mouse IgG抗体を用いた。唾液サンプルは0.1%Tween-PBS(-)で2倍から10倍に調整した後、5種類の金コロイド標識抗体溶液と各々混合した。10分後に各々ライン発色の有無を確認した後、イムノクロマトリーダにて測定した。 「結果」4種の抗体感作コンジュゲートのうち、LS-C196794/ Mouse Anti-human Carbonic AnhydraseⅥ antibodyモノクローナル抗体が、過去に報告したポリクロ―ナル抗体と同等の発色反応を示した。 「考察」一般的にポリクロ―ナル抗体では、モノクローナル抗体と比較して複数種の抗体が混在するため、予期せぬ抗原と交叉反応を起こす確率が高くなる。そこで今回、モノクローナル抗体のイムノクロマト試薬への利用を試み、1種類のモノクローナル抗体で発色反応が認められたため、今後この抗体を利用し、亜鉛欠乏性味覚障害の診断の根拠になりうる耳下腺唾液中亜鉛結合タンパク質測定法の構築を目指す。
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