研究実績の概要 |
インプラント支持のコンポジット前装ジルコニアクラウンの長期経過安定性獲得の要件の検証のため,加速劣化試験後の破壊強度を評価した. 下顎第一大臼歯欠損に対するインプラント治療を想定し,インプラント体をポリエステル樹脂に植立した。そのインプラント体に既製のチタン製アバットメントを装着した。インプラント上部構造は,1) ジルコニアフレームに陶材を焼き付けたクラウン(ジルコニアオールセラミッククラウン,ZAC),2) ジルコニアフレームに間接修復用コンポジットを前装したクラウン(コンポジット前装ジルコニアクラウン,ZIC)とし,さらに,ZICはエステニアオペークプライマー(EOP, ZIC-E)とクリアフィルフォトボンド(CPB, ZIC-P)の2種類のプライマーにてジルコニアフレームを処理後,前装を行い,計4条件とした.それら実験試料に対して,加速劣化試験(水中熱サイクルおよび繰り返し荷重負荷)後に,破壊強度試験,破壊形式の観察,光学顕微鏡および走査電子顕微鏡での分析を行った。 その結果,ZAC群の破壊強度(3.05 kN)は,ZIC群(2.37 kN)とZIC-E群(2.43 kN)に比較して有意に高い値を示した.また,ZIC群,ZIC-E群およびZIC-P群(2.72 kN)間に有意差は認められなかった.ZIC群は,ジルコニアフレームおよび前装材料ともに破折が多く認められたが,その他の群ではジルコニアフレームと前装材料間での混合破壊が認められた. 以上より,ジルコニアフレームを疎水性リン酸エステル系モノマー(MDP)を含む重合開始剤を含むプライマーで表面処理をして間接修復用コンポジットを前装したクラウンは,ジルコニアオールセラミッククラウンに匹敵する長期破壊抵抗を示すことが明らかとなった.
|