研究課題/領域番号 |
24592936
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
成田 紀之 日本大学, 松戸歯学部, 准教授 (10155997)
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キーワード | NIRS / ジストニア / ボトックス治療 / 感覚トリック / 動作特異性 |
研究概要 |
不随意運動症のボトックス治療は,骨格筋の異常緊張の軽減にともなう機能的改善を生むが,このとき‘顔面運動野ならびに近傍の皮質領域(補足運動野,前運動野,感覚野)の活動性をも調整するかについては不明であるので,明らかとしたい。また,ボトックス治療後の経過においても追跡し,データを重ねることで,ボトックス治療に関する時間的効果を明らかとできる。さらに,運動療法によるニューロリハビリテーションについても,Sensory Trick を応用した運動療法の効果や補綴治療の効果についても筋活動ならびに関連皮質活動性の両面から明らかとする。 1‘口下顎ジストニアにおけるボトックスの効果’については,ボトックス治療による不随意性の異常筋活動は消失あるいは軽減するとともに疼痛困難と運動困難の自覚強度,Dystonia Scale,HADS,SCL 90-Rの‘うつ’と‘身体化’,OHIP-Jの‘痛み’などのスコアに有意な低下が示された。一方,SF36v2の身体的健康度は有意に向上した。以上のことから,顎口腔領域のジストニアにおいて,ボトックス治療は運動性の障害ばかりか,感覚/精神心理やQOLなど,非運動性スコアの改善に有効と考えている(平成26年度顎関節学会発表予定,本年度論文投稿予定)。 2‘感覚トリックについて’は,Effects of sensory trick on modulations in motor behavior and activities in prefrontal and parietal cortex in idiopathic oromandibular dystonia,(Stockholmsm Convention Center)としてThe 18th International Congress of Parkinson's Disease and Movement Disorders(Abstract Number: 551571)にて発表予定であり,本年論文の投稿予定である。 また,これまで数例の口下顎ジストニア症例に経頭蓋磁気刺激を応用してきたが,本刺激データの解析を行うとともに,咀嚼認知についても前頭皮質活動から検討する考えである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.口下顎ジストニアへのボトックス治療は,骨格筋の異常緊張の軽減にともなう機能的改善を生むが,このとき‘顔面運動野ならびに近傍の皮質領域(補足運動野,前運動野,感覚野)の皮質活動性をも調整するかについて: 現状,特発性の口下顎ジストニア症例について,ボトックス治療前後における,筋電図/顎運動検査,感覚運動皮質のNIRS検査による‘運動性の改善効果’と感覚運動自覚とジストニアスケール,QOLなどの‘非運動性の改善効果’について,研究内容の一部を Dys-Spas-Bot 2013 (デンマーク)ならびに121st, OMICS Group Conference(ラスベガス)で口演したが,本年は国際疼痛学会IASP(ブラジル)で,‘ジストニアの疼痛自覚とボトックスの効果’について発表を予定している。 2.運動療法によるニューロリハビリテーションについても,Sensory Trickを応用した運動療法の効果や補綴治療の効果についても下顎運動機能ならびに関連皮質活動性の両面から明らかとする。 現状,‘ジストニアにおけるSensory Trickの効果’については,本年International Parkinson and Movement Disorder Society Parkinson's Disease Educational(ストックホルム)にて発表を予定しているが,口腔顔面領域のSensory trickによる筋電図学的ならびに運動学的抑制は,感覚運動皮質領域,なかでもPMC(premotor cortex)とSMA(supplementary motor cortex)に有意な活動性の低下を伴うことを明らかとした。 3.ボトックス治療前後のデータを今後2~3症例重ねることで,ボトックス治療に関する運動障害の軽減と脳活動変調のかかわりが明らかとなる。また,障害の部位的ならびに動作的な特異性からの検討も促進させたい。
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今後の研究の推進方策 |
第一の方策としては,症例数の確保であり,特発性のジストニアについて前述したように,順調に検討が進められている。また,抗精神病薬によって生じたと考えられる遅発性ジストニアについても,今後同様の検討を進める必要があり,これらについては,最終年内には検討を終える予定である。 特発性のジストニアでは,1) Botox治療の皮質活動の可塑的変化, 2) Botox治療の非運動性の治療効果, 3) Sensory Trickの皮質活動への変調効果について,国際誌への投稿を本年度に終える予定である。 日常臨床において,コンスタントにジストニア症例が受診しているので,本研究内容の達成は可能と考える。本年は,さらに,経頭蓋磁気刺激の応用についても積極的に検討を行いたい。このため、海外の研修も考慮している。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた理由は,昨年度の予算施行の研究内容が経頭蓋磁気刺激(TMS)に関するものであったことから,本年度の研究内容に‘不随意運動症例への経頭蓋磁気刺激法の応用’を加えて,TMSの研修あるいは学会発表・学会参加を本年度(平成26年度)に繰り下げたことによる。したがって,経頭蓋磁気刺激にかかわるジストニア治療も,本年度に実行するものである。 最終年度に当たる26年度は,経費として論文校正,投稿,学会発表,TMS研修にかかわる予算申請を予定している。
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