研究課題/領域番号 |
24592945
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 福岡歯科大学 |
研究代表者 |
松浦 尚志 福岡歯科大学, 歯学部, 准教授 (60330966)
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研究分担者 |
佐藤 博信 福岡歯科大学, 歯学部, 教授 (00145955)
徳富 健太郎 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (20508981)
片渕 三千綱 福岡歯科大学, 歯学部, 助教 (90454933)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 顎骨 / コラーゲン / ミネラル |
研究概要 |
ヒト献体における四肢骨と比較した顎骨の骨基質性状の特異性を検証した.下顎骨では上腕骨および大腿骨と比べて,コラーゲン量が多く(p < 0.01),コラーゲンのリジン残基の水酸化の程度が低く(p < 0.01),またミネラル量が多かった(p < 0.01).ミネラル量とコラーゲン量の間には正の相関が認められ(r = 0.182, p = 0.03),ミネラル量とコラーゲンのリジン残基の水酸化の程度の間には負の相関が認められた(r = -0.294, p < 0.01). 下顎骨が上腕骨と大腿骨に比べ,コラーゲン量とミネラル量が多く,コラーゲンのリジン残基の水酸化の程度が低かった結果は,下顎骨が四肢骨と比べて骨質が良好な方向にある可能性を暗示している.顎骨特有の疾患(ビスフォスフォネート関連顎骨壊死など)が存在することや、四肢骨と比較して顎骨では卵巣摘出後の骨減少量が少ないこと,骨折治癒において四肢骨では膜内骨化と軟骨内骨化が混在するが,顎骨では膜内骨化が優位であること,顎骨は四肢骨よりも骨髄間質細胞や間葉系幹細胞の骨形成ポテンシャルが高いことなどにより,顎骨の特異性が徐々に明らかにされてきた.本研究結果はそれらの研究結果と符合するものであり,顎骨は細胞レベルのみならず骨基質レベルにおいても特異性を有しているものと推測される.顎骨は咀嚼運動により多方向の複雑な力を負担するのみならず,平静時においても絶えず顎運動によって生じる力を許容しなければならない組織であり,その特殊な環境因子が顎骨の特異性に関与しているのかもしれない.また,コラーゲン量,コラーゲンのリジン残基の水酸化の程度,ミネラル量の間に相関が認められたことは,in vitroの研究でのコラーゲンの量と翻訳後修飾の程度がミネラルの沈着量に影響する現象がヒトの骨組織でも起こっている可能性を示す所見として興味深い.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究自体は順調に進んでいる.ただし,当初臨床研究で骨質と残存歯数を検証していく予定であったが,当初の予定を変更しヒト献体を用いた臨床前研究を遂行した.骨質を調べる上でまず,顎骨の骨質の特異性を明らかにする必要があること,また骨質と残存歯数は少なくとも年齢や性別の影響を受ける可能性があり,それらを臨床研究に入る前に確認する必要が生じたためである.臨床研究の前にそれらを確証すれば,多様な因子を含むヒトの臨床研究における解析において,研究計画が効果的かつより洗練されたものとなり,結果的に臨床データの解析が効果的にかつ速やかに行えるものと考える.
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今後の研究の推進方策 |
ヒト臨床研究を効果的に行う目的で,残存歯数と年齢,性別,骨質との関連についてヒト献体を用いた検証で明らかにする.研究方法は当初の計画に加えてミネラル量の計測を加えて,骨質をミネラル量,コラーゲン量およびコラーゲンの翻訳後修飾の一つであるリジン残基の水酸化の程度の定量によって判定する.
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次年度の研究費の使用計画 |
主に人件費および謝金の支払いが発生しなかったため,67,902円の未使用金が生じた.次年度はこの未使用金を本年度より多く必要とするコラーゲン分析のための試薬などの物品費として使用する.
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